芸能

伝説の“視聴率男”が予見していた「視聴率時代の終わり」

テレビ界のご意見番でありレジェンドだった(時事)

テレビ界のご意見番でありレジェンドだった(時事)

 テレビ・ラジオプロデューサーで、最高視聴率64.8%という驚異的な数字を叩き出したコメディー番組『てなもんや三度笠』をはじめ、『花王名人劇場』などの人気番組を数多く手掛けて“視聴率男”と呼ばれた澤田隆治さんが5月16日亡くなった。88歳だった。澤田さんは本誌・週刊ポストの取材に何度も応じ、往事のエピソードを明かしていた。取材の中では常に現在のテレビ界を気に懸け、苦言を呈していた。

 近年、どのチャンネルでも似たような番組が並んでいる。2011年8月の取材で澤田さんは「すべてがデータ主義。これが元凶でしょうね」と話していた。

「昔は(他局で)当たった番組は意地でも真似しなかった。物真似は恥とされていました。ところが今は、いいデータが出たからうちもやろうという発想になっている。同じようなタレントを使って、同じような内容の番組をやれという命令が下される。それをみっともないという人は誰もいない」

 そう嘆く澤田さんは、事細かに数字を気にする慣行がなかった自身の現役時代について、「データが少なかったぶん、自分が面白いと思ったことをドンドンやれた」と振り返っていた。

「いつの時代も、大衆の気持ちは大雑把にはつかめるが、明確な答えはない。それをデータで裏づけようとしたら、同じような答えになって当たり前です。データに頼れば楽だし、安心感もある。しかし、数字を追えばすべてがヒットするわけではない。データにプラスして、人間の知恵が必要となる。それが今のテレビ界に求められていることでしょう。データをどう解釈するか、そこにクリエイティブがあると思う」

 近年も、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)が当たれば海外ロケ番組が増え、『東大王』(TBS系)がヒットすれば「東大」を冠した番組がテレビ欄に並んでいる。そんなテレビ界を澤田さんは誰よりも憂いていた。

 加えて、「視聴率が物差しとなる時代の終わり」も予見していた。2013年12月の取材では、多チャンネル時代が到来したことによる変化についてこう語っていた。

「かつて、テレビ局のお荷物だったBSに高齢の視聴者が流れていて、媒体としての価値が変わってきた。BSは(個別番組の)視聴率が出ないためにメディアでも取り上げられないが、現実として視聴者が増えていることはわかるので、スポンサーもBSに流れつつある。(競合となるBSの数字が出ない以上)視聴率は過去の遺物になってきています。しかし、地上波のテレビマンたちには、視聴率しか評価の尺度がない。視聴の形態がいろいろと変わるなかで、視聴率ばかりを物差しにする番組作りをしていては、大変なことになるでしょう」

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン