世界ではワクチン接種人口が10億人を超えたが、精神障害の報告例はほとんどない。
世界の論文を調べた医療経済ジャーナリストの室井一辰氏によると、今年4月、ファイザー製ワクチンで89歳の男性が「せん妄」の精神障害を起こした初めての症例を、メキシコの医療チームが医学誌『ジェリアトリクス&ジェロントロジー・インターナショナル』に発表した。
「メキシコの男性には、気が動転するような症状が現われました。2型糖尿病や高血圧で、腎臓が悪いなどの既往歴はあったが、介護なしで自立して生活していた。
入院して回復しましたが、認知症があったわけではなく、ワクチン接種の影響のようだと研究グループは推定し、『医師はこうした事態が起こり得ることを認識し、患者を注意深く観察し、リスクの高い患者とその家族に警告することが重要だ』と注意喚起しています」(室井氏)
ただし、医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏は「副反応を必要以上に恐れることはない」と指摘する。
「感染するリスクを考えると、ワクチン接種は必要不可欠です。大切なのは情報公開。新しいワクチンだから、因果関係がわからないケースも含めて副反応の疑い症例を公表し、どういう症例があるかをあらかじめ踏まえていれば、医療機関も冷静に対処できるからです」
悲劇を繰り返さないため、副反応を正しく知り、備えることが必要だ。
※週刊ポスト2021年6月18・25日号