芸能

高田文夫氏 人の情や笑いが自然と身につく「寄席」を救うために

「日頃世話になっている寄席を何とかしたい」という思いが

「日頃世話になっている寄席を何とかしたい」という思いが

 放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、コロナ禍で危機にある「寄席」への思いをつづる。

 * * *
 洒落と粋で生きてるはずの“笑芸界”だが、今回ばかりは野暮を承知で書かせてもらう。我々東京っ子が小さい頃よりわくわくしながら洒脱さを肌で学んだ「寄席」が危ないのだ。東京・大阪の偉大で下らない地方文化かもしれないが、学校では教わらない人の情やコミュニケーションツールである“笑い”を自然とここで身につけた。

 このコロナ禍である。噺家達は「寄席は社会生活の維持に必要なもの」とコメントしたが、官房長官は何度も記者会見やインタビューで「よせき。よせき」と言っていた。よせきでは何やら木を切りそうである。“よせきは木を切るトントントン”である。江戸の昔からこれは“よせ”と呼んでいた。「人を寄せる場(席)」だから日本人は普通にこう呼んできた。

 都内5軒の寄席を支援し何とかしようというので、真面目な顔でクラウドファンディングによる寄付を募り始めた。寄席なんてものは昔から席亭達(小屋主)の心意気でやってきたものだから一度なくなったらもう二度と始まらないだろう。大して儲かる商売でもなさそうだし。

 噺家連中にとって寄席は“道場”のようなものととらえられているだろう。「落語協会」会長・柳亭市馬、「落語芸術協会」会長・春風亭昇太。そこに三遊亭小遊三と春風亭一之輔が並んで神妙な顔をして会見をしていた。四人共、普段私の前では決して見せない大マジな顔だ。日頃世話になっている寄席を何とかしたいという心持ちは、うっすら伝わってくる。

 当初の目標は5軒で5千万円だったが、6月に入り7千万近く集まっているようだ。6月30日まで受け付けている。スタート当初は「合点だ」と皆の心意気で集まるものだが、中盤終盤になると失速というのも多いようで。両協会のネットの寄付受付ページを、すいませんが見て下さい。

 何とか継続して欲しい寄席5軒とは、「上野・鈴本演芸場」「新宿末広亭」「浅草演芸ホール」「池袋演芸場」「お江戸上野広小路亭」である。次の世代にも肌で感じる江戸のにおい、風情と笑いを残しといてあげたいものですからネ。

 江戸の生き様といえば葛飾北斎。映画『HOKUSAI』が公開中。平均年齢が40歳のあの時代に90歳まで生き、3万点もの作品を残した江戸の天才絵師。青年期を柳楽優弥、老年期を田中泯。素晴しい演技で心をゆさぶってくる。あの波がバッシャン、バッシャンである。版元である、今でいう名プロデューサー蔦屋重三郎を、『ドラゴン桜』阿部寛が演じている。TSUTAYAで借りる前に映画館でどうぞ。

イラスト/佐野文二郎

※週刊ポスト2021年6月18・25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
裁判所に移されたボニー(時事通信フォト)
《裁判所で不敵な笑みを浮かべて…》性的コンテンツ撮影の疑いで拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26)が“国外追放”寸前の状態に
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山上徹也被告が語った「安倍首相への思い」とは
「深く考えないようにしていた」山上徹也被告が「安倍元首相を支持」していた理由…法廷で語られた「政治スタンスと本音」【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
不同意性交と住居侵入の疑いでカンボジア国籍の土木作業員、パット・トラ容疑者(24)が逮捕された(写真はサンプルです)
《クローゼットに潜んで面識ない50代女性に…》不同意性交で逮捕されたカンボジア人の同僚が語る「7人で暮らしていたけど彼だけ彼女がいなかった」【東京・あきる野】
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン