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歴史探訪東京さんぽ 庶民も通った江戸の遊郭・吉原へと続く日本堤

歌川芳虎『東都名所八景 吉原日本堤夜雨』1854年(写真/国立国会図書館)

歌川芳虎『東都名所八景 吉原日本堤夜雨』1854年(写真/国立国会図書館)

 遊びに出かけようと思っていても、雨に降られると億劫になってしまうもの。そんなときは、名所が描かれた浮世絵を鑑賞しながら、今との違いに思いを馳せる“歴史探訪東京さんぽ”を楽しもう。

 歌川国芳の弟子である歌川芳虎の作品『東都名所八景 吉原日本堤夜雨』(1854〈安政元〉年)は、江戸の歓楽街・吉原へ向かう人々の様子を伝えたものだ。夜、しかも雨が降っているにもかかわらず、遊郭に遊びに出かける人々の様子が描かれている。

「中央には、駕籠に乗って通う遊び人が描かれています。左に提灯を照らす人の姿が見えますが、これが夜を表わす仕掛けとなっています。手前に見えているのは日本堤沿いに軒を連ねる店々で、雨が降ってきたことから店じまいをした様子がうかがえます」(岡田美術館・小林忠館長)

 日本堤は隅田川の氾濫を防ぐために設けられた土手で、人々はここを通って遊郭に通っていた。

 江戸幕府によって公認された遊郭があった吉原は、明治の頃から次第に衰退。現在は往時をしのぶ建築物はほとんど見当たらない。往時をしのぶことができるのは、遊郭で遊んだ帰りの客が名残惜しそうに振り返ったことから名付けられた見返り柳。震災や戦災などで数代にわたって植え替えられている。また、遊郭の鎮守の神として信仰されていた吉原神社もある。古くからこの地に祀られていた社を明治に入り合祀して創建した。

※週刊ポスト2021年7月2日号

遊郭で遊んだ帰りの客が名残惜しそうに振り返ったことから名付けられた見返り柳。震災や戦災などで数代にわたって植え替えられている(撮影/内海裕之)

遊郭で遊んだ帰りの客が名残惜しそうに振り返ったことから名付けられた見返り柳。震災や戦災などで数代にわたって植え替えられている(撮影/内海裕之)

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