国内

田中角栄氏から石破茂氏への忠告「握った手の数しか票は出ない」

石破茂氏が田中角栄氏からの訓示を振り返る(時事通信フォト)

石破茂氏が田中角栄氏からの訓示を振り返る(時事通信フォト)

 石破茂氏は自治大臣などを歴任した父・石破二朗の死後、三井銀行(現・三井住友銀行)を退職し、木曜クラブ(田中派)の事務局に勤務。1986年衆院選で鳥取全県区から出馬し、28歳の全国最年少で当選を果たした。石破氏が田中角栄氏について述懐する。

 * * *
 角栄先生と話す時は必ず1対1でした。私だけでなく政治家の出処進退の時は常に1対1。私の場合は、時間は5分と決まっていて、サイドテーブルに呼び鈴が置かれていて、5分経つとチーンと鳴らす。「お前、出て行け」のサインです。だからお会いする前に、話すことをしっかり整理しておかないといけない。

 選挙に出ることになり、暇乞いに目白を訪ねた時は「お前みたいなアンちゃんが、なんで自民党から出られるんだ? それは(他の候補者より)1億8000万円安いからだ」と言われました。なぜ1億8000万円なのか尋ねると、「名前の売り賃と信用代」だというのです。

「石破茂なんて誰も知らないが、お父さんの石破二朗のことは知っている。だからお前の名前はタダなのだ。あの偉大なお父さんの伜ならそんな変なヤツじゃないだろう、その安心感がタダなのだ」

 そのうえで選挙区の有権者の数や面積などあれやれこれやを見積もると1億8000万円に相当する。それを譲り受けられるから出られるというだけのことだと。非常に悔しかったですね。

 ただ、後から聞くと、羽田孜さんとか小沢一郎さんとか、2世議員には皆同じことを言っていたようです。それが角栄先生の新人教育だった。たしかに2世の中には親の名前に胡座をかいて「どうせ当選するよ」という人がたくさんいる。でも、そんなものは長続きしませんからね。

 先生にはいろいろなことを教わりましたが、最も大きかったのは、「歩いた家の数以上の票は出ない。握った手の数しか票は出ない」ということ。余計なことは考えずにともかく歩けと指導され、地域の支援者と一緒に今日は200軒、次は300軒とひたすら回りました。結果はまさにその通り。私は5万4000軒歩いて、獲得したのは5万6534票でした。

 しかし、私が当選した時は角栄先生はすでに脳梗塞で倒れていた。真っ先にご報告したくて目白に行きましたが、会うことは叶わなかった。

 角栄先生の演説は天才的でしたが、忘れられないのが私の結婚式でのスピーチ。議員になる前でしたが、角栄先生に親代わりとしてご挨拶いただいたのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン