6月16日、安定的な皇位継承策を議論している政府の有識者会議は、専門家の意見案をまとめた。その会合で、座長の清家篤・慶應義塾大学名誉教授は今後の議論について、「まずは現在の皇位継承の流れを前提とし、その上で皇族数の確保のための方策を検討していきたい」と述べ、「男系男子」による皇位継承は変えずに女性宮家創設の議論を進める方向が決まった。
皇室には、天皇、秋篠宮の次の世代の男子皇族は皇位継承順位2位の悠仁親王1人しかいない。
天皇を支える皇族の減少は大きな課題で、これまで皇室は「女性宮家」創設を望ましいと考えていると見られてきた。
しかし、2011年に野田佳彦内閣で女性宮家創設の議論が始まってからすでに10年が経ち、皇室の事情は大きく変わった。
女性皇族で最年少の愛子内親王が今年12月に20歳を迎え、成人皇族となる。いわゆる結婚適齢期が近づくことになる。宮内庁担当記者は天皇、皇后の女性宮家創設への複雑な立場を解説する。
「天皇ご一家はとても仲が良く、学習院大学に通われている愛子さまの卒業後の進路など日頃からよく話し合いを持たれています。そうしたなかで、雅子皇后の心配事のひとつが女性宮家の創設です。
創設されることになった場合、両陛下は愛子さまが宮家として残ることが良いというお気持ちがある一方で、皇室典範では悠仁さまの天皇への道筋が決まっているから、愛子さまが皇族として残っても将来はどうなっていくのかをご心配なさっている。両陛下は侍従長や宮内庁長官を通じて有識者会議の情報を聞くなど、議論の動向に高い関心を持たれています」
政府の皇位継承議論の過程を辿ると、愛子内親王の立場が大きく変わってきたことがわかる。
愛子内親王が3歳だった2005年に小泉純一郎内閣の「皇室典範に関する有識者会議」が提出した報告書では、〈皇位の安定的な継承を維持するためには、女性天皇・女系天皇への途を開くことが不可欠〉とされ、皇位継承順位は天皇の直系子孫優先で、男女を区別せずに長子優先が適当であるとして改正案が準備された。