「健康じゃなきゃ野球はできない」

 今だからこその悩みもある。昨年から続くコロナ禍によって、以前のような猛練習ができなくなった。

「室内練習場で日付が変わるまで打っていた」といった秘話は数えきれないほどあるが、それも過去の話。免疫力を高めるために、1日7時間以上の睡眠を確保し、日々の手洗い、うがい、検温の大事さを口酸っぱく伝えている。寮で検温をするのは、門馬監督の役目だ。おでこにセンサーを当てるときには、選手の表情を必ず見る。

「目が充血していたら、『どうした?』と聞くことがあるし、少しでも熱があれば、『病院に行ったほうがいい。無理をするなよ』と声をかけるようになりました。

 以前のぼくが、子どもたちの健康にそこまで気を遣っていたかというと、できていなかったと思います。今も『もっと野球をやりたい。やらせてあげたい!』という気持ちはありますが、『健康な体がなければ野球ができないよな』と言い聞かせている自分もいます」

最後の夏「神奈川で7勝、甲子園で6勝」

 葛藤の中で、今の環境に合ったベストを尽くし、今春のセンバツで頂点を獲った。そして、最後の夏、「春夏連覇」のワードはあえて口にせず、「神奈川で7勝、甲子園で6勝」を目標に据える。

 負けたら終わりの夏の大会。「怖さはないんですか?」と聞くと、「どんな大会でも試合は怖い」と答える。怖さを感じるからこそ、日々に全力を注ぐ。

 座右の銘は『一日一生』。今日の一日が明日につながることを信じて、選手とともに最後の最後まで戦い続ける。

今夏の甲子園で春夏連覇を果たして有終の美を飾ることができるか(時事通信フォト)

今夏の甲子園で春夏連覇を果たして有終の美を飾ることができるか(時事通信フォト)

【プロフィール】
おおとし・みのる/1977年生まれ、横浜市出身。成蹊大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て2003年に独立。高校野球のほか中学軟式野球の取材・執筆活動を行っている。著書に『激戦 神奈川高校野球 新時代を戦う監督たち』、『名将たちが語る「これから」の高校野球』(インプレス)、『高校野球継投論』(竹書房)、『高校野球界の監督がここまで明かす!投球技術の極意』(カンゼン/7月20日発売予定)などがある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン