まん延防止の再要請も受け入れられず
コロナ感染拡大も大きなリスクである。北海道は7月17日以降、新規感染者数が再び100人超の日が続いている。7月26日には札幌市だけの感染者数が約1か月半ぶりに100人を超え、緊急事態宣言解除後で最多となるなど、増加傾向が顕著になっている。
鈴木直道・北海道知事は札幌での感染再拡大に対し「まん延防止等重点措置」の再適用を国に要請している。夏の観光シーズンに突入したことで、道外からの観光客が増え、感染拡大懸念は高まる一方だ。ところが政府は「今の時点で直ちに必要だとは見えない」(西村康稔経済再生担当相/7月20日)とつれない対応だ。
組織委員会は大通公園など人が集まりやすいスポットへの立ち入り禁止など人流対策を発表しているが、いざマラソンや競歩が始まったら、コースの沿道に人が集まるのは目に見えている。
「5月に行われた五輪テスト大会(ハーフマラソン)でも観戦自粛を呼びかけていましたが、沿道にはそれなりに人が集まっていました。場所によっては密になっているところもありました。
7月24日に行われた自転車ロードレースでも都内のスタート会場周辺の沿道はスマホを手にした観客が群がっていましたし、観戦自粛といったところで本番になれば、やはり相当数の観戦者が集まってしまうでしょう。札幌ではマラソン目当ての観光客もかなりやって来るでしょうから、人流を止めるのは無理です」(五輪を取材するジャーナリスト)
マラソンのレース当日は、沿道にスタッフ約2000人を配置して、観戦者が密集するのを防ぐ予定だが、スタッフの数だけでも十分に密になる規模だ。
懸念される沿道での反対活動や抗議行動
さらに、もうひとつ懸念材料がある。五輪開催に反対する一部の人による競技実施中の反対活動や抗議行動である。マラソンにはバッハ会長が視察に訪れるというから、なおさら心配である。
茨城県で行われた聖火リレーでは、沿道にいた50代女性がランナーに水鉄砲で液体を発射するという事件があった。マラソンや競歩は距離が長いだけに、完全に警備するのは至難の業だ。
2030年冬季五輪誘致に向け、札幌市や北海道は今大会のマラソン・競歩、サッカー予選を成功裏に終えたいだろうが、コロナ感染拡大と熱中症という重大なリスクを抱えての競技実施となる。「安全・安心」な大会が看板倒れにならないといいのだが。