今年6月に刊行されたばかりの『深海生物』には、約530種類の生き物が紹介されている。編集を手掛けた北川吉隆室長によると、このジャンルの図鑑は、かつては200種類程度が掲載の限界だったという。
「ここ10年ほどで、研究や撮影技術が飛躍的に進歩した。研究者自身の撮影技術が上がったほか、潜水艇が海底6000m以上まで潜れるようになりました。そのおかげで、深海生物の掲載数が跳ね上がったのです。
それまではボロボロの標本でしか見ることができなかったリュウグウノツカイの浜辺に打ち上げられたばかりの姿から、想像図しかなかった深海生物が実際に泳いでいる生態写真まで、ハッキリと載せられるようになりました。そうした成果のすべてが、一冊の図鑑に閉じ込められています」(小学館図鑑担当の北川室長)
深海だけでなく、地上の動植物、昆虫や宇宙など、まだまだ“未開の地”はいくらでもある。人間の科学技術が進化し続ける限り、図鑑もまた、その厚みを増していくのだ。
※女性セブン2021年8月12日号