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東京五輪「マイナースポーツが教えてくれたこと」はたくさんあった

総合馬術個人で4位に入った戸本一真(dpa/時事通信フォト)

総合馬術個人で4位に入った戸本一真(dpa/時事通信フォト)

 開催をめぐって議論百出の五輪だったが、スポーツの持つ魅力について再確認した人も多かったのではないか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘した。

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 早いもので明日8日には閉幕するオリンピック。金メダルの数で盛り上がり、柔道や体操の快進撃に湧き改めてスポーツの魅力を思い知った人も多いはず。一方では世界トップクラスで盤石とされた女子テニスや男子ゴルフ、バトミントンなどでまさかのメダルを逃すハプニングが。そんな人間臭い結果もまた、スポーツの醍醐味の一つと言えるのでしょう。

 何よりも興味深かったのは、自国開催だけにぞんぶんに見ることができた「マイナースポーツ」の存在です。知らない種目に目を凝らすことができた。びっくりするような発見があった。例えば89年ぶりの快挙にあと1歩と迫った総合馬術・障害飛越。戸本一真さんがメダルを取るかどうか固唾を飲んで見守りたかった……のですがどうにも気が散って仕方なかった。なぜなら馬が飛び越える柵=障害物の装飾があまりに奇妙で。ダルマ、こけし、提灯、桜、青海波とド派手な和柄に驚く。優雅な貴族風の馬術に、こうもキッチュなギミックとは何ゆえに?

 調べてみると、実は毎回開催国のテイスト感を盛り込むことがお約束らしい。でも、今回のダルマ、ちょっとやりすぎだったかも。目が怖かったのか失敗する馬が続出。「そのせいか同じ日に行われた総合馬術個人障害の決勝ではだるまは使われず、東京オリンピックのマスコット『ミライトワ』にとって代わられた」(読売新聞オンライン 2021/08/03)というオチまでついていました。人と馬とのコミュニケーションが試される馬術だけに、大きな目をしたダルマに馬が反応? 競技場にウマがあわず失敗してしまう馬が、ちょっと可哀想な気もしました。

 さて、「目新しさ」といえば、やはりBMXにサーフィン、スケートボードなど若者カルチャーから生まれてきた新競技でしょう。日本のメダル数もすごいけれど、競技をじっくり見ることで発見もてんこ盛り。解説者が連発するユニークな言葉も話題になりました。

「メイクする(技を達成する)」「ゴン攻め(思いきり攻める)」「ゲシる(後の車輪をひっかける)」「キャンキャン(足を交差して出す)」「ビタ着(前後の車輪を同時着地)」……一般人が皆目知らない「専門用語」を連発した解説。「いい音出てますね」とスケボ解説者が言う。車輪やボードの底がコンクリートの角にこすれる音まで味わうとは。と、普段耳にしない新鮮な表現にたくさん出会えました。

 それをただ「珍しい」と面白がるだけではなく、注目すべきはそうした独特な言葉が示している「媚びないスタイル」でしょう。あくまで自分たちの世界で流通している用語を使って世界観そのままに直接的・肉感的な感動を届けてくれた。

 選手も単に「技」を競うだけでない。音楽にファッション、ストリート文化が融合している。そしてサーフィンのようにうねる海の恐怖といった環境も含めて丸ごと目撃できました。競技へのリスペクトも伝わってきて、見ているこちらもスマイルに。

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