冒頭のインタビュー、筆者は彼女の怒りを十分に受け止めた上で「若者が政府や自治体にバカにされるのは選挙に行かないから」と呈した。彼女自身はちゃんと選挙に行くが、彼女の周辺は仕事だ、用事だと行かない人が多いという。
「どうして行かないんでしょうね、知らないところで決められるの、怖くないんですかね」
政治家は票がすべてである。どの政党の誰に入れるかは好き好きだが、選挙に行かない時点で彼ら政治家からすれば扱いは「バカ」なのだ。こうした主張を「投票行動に結びつけている」と嫌う向きもあるがおかしな話だ。民主政治とはすなわち投票行動に帰結する。
政治とは、私たちの生活の大枠とは選挙で決まるのだ。例えば今年度、知らないうちに各種税金が上がって驚いた方々も多いだろうが、知らないのではなく行かなかった選挙の結果がそれなのだ。国政選挙すら投票する20代は30%程度、30代でも半分は選挙に行かない。これでは世代人口の圧倒的な団塊世代やその周辺世代に勝てるわけがないし、政治の老人優先は当然だろう。保守・革新いずれにせよ、選挙に行かなければワクチンすら後回しにされる。それどころか、これからもっと恐ろしい、たとえばロックダウンのような現役世代の人生を完全に「後回し」にする強権が発動されるかもしれない。
この秋、コロナ禍で初の国政選挙が行われる。信任、不信任はともかく、どうか選挙には行って欲しい。身近な政治手段も行使しないということは、悪人にされても、それどころか殺されても文句は言えない。これは大げさな話ではない。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)ほか。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。