気持ち良すぎるキャンパストップの開放感
そして最後に、これは普通の500にはないキャンバストップの500C特有のポイントだが、オープンにすると気持ち良すぎたこと。
オープンにしたときの気持ちよさは格別
キャンパストップ状態でもほどほどには楽しめる
冒頭で述べたように500Cは完全なコンバーチブルではなく、屋根からリアガラスにかけての部分だけが開閉する。フルオープンに比べるとさすがに開放感は落ちるのではないかと予想していたが、実際に開けて走ってみるとフルオープンでないことなどどうでもよくなるくらいに光の採り込みが素晴らしかった。
このトップはレトロ500と同様、リアガラスの部分まで開けられるようになっている。最大に開けた時は後方視界が若干悪くなるため、クリアな後方視界が欲しいときは通常のキャンバストップ状態にすればいいのだが、リア部分がキャビンに被っているのと下がっているのとではこんなに開放感、明るさが違うのかと驚くくらいの違いがあった。
鹿児島では後席にも人を乗せて薩摩半島南部をドライブしたが、後部を完全に下げた状態だと後席もオープンエア感満々になる。
ソフトトップを全開にすると後席もめいっぱいオープン気分に
ソフトトップを全開にしたところ(フィアット500C)
「ADAS」はリスク回避で必要な装備だが…
ダイハツ・コペンもしかりなのだが、こんなにもノリが良く、転がしていて楽しいオープンエアのクルマが200万円台で買えるというのは実に素晴らしいことだ。その価格の安さはADASや電動パワートレインなどのハイテク未搭載によるところが大きい。
といって、ハイテク不要などと言うつもりはない。今回のドライブの道中、山口の美東で信号待ちをしていたところ、目の前で直進車と右折車が衝突する事故が発生した。右折車が飛び出したのは直進車がどう対処しても衝突は避けられないというタイミングだったのだが、直進車は見事としか言いようのないフルブレーキングで衝突時の速度を低めた。
何と素晴らしいドライビングテクニックなんだろうと思ったが、実際にはADASの非情ブレーキのなせるわざだった。ブレーキをかけたのはスズキの現行「ハスラー」。ひと昔前の丸腰の軽自動車だったらドライバーは重傷を負っていたことだろう。
そういうシーンを目の当たりにすると、ADASをまったく欠くクルマを万人に勧めるのはいささかためらわれる。多くのクルマは無傷で一生を終えるのだが、この種の安全装置は致命的な状況を一度回避しただけでもお釣りが山のように来るもの。ないほうがいいなどということはない。
だが、今のクルマを見回すと、不思議なことにローテク車のほうがより明瞭なアイデンティティを持ち、独特な楽しさを帯びているような気がする。そのひとつである500Cでの3800kmドライブは、最高に気持ち良く、最高に楽しかった。
もしこの先、こういうローテク車が消えていったとき、ハイテク車がこういう楽しさを持ってくれればいいのに……などと思った次第だった。
瀬戸内海を眺めつつ行くフィアット500C。どこまでもトコトコお出かけする気にさせられるクルマだった
島根・出雲の海岸にて(フィアット500C)
●撮影/井元康一郎