頑張って長旅をしたいと思えるクルマ
では、インプレッションに入ろう。500Cとて、アンチロックブレーキや横滑り防止装置ESPなど欧州市場でマストとされている電子制御は入っている。エンジンは吸気バルブをカムシャフトで直接動かすのではなく、油圧で自由自在に制御するという珍しいシステムを持っている。
変速機は自動クラッチATだが、前述のような電動化やADASの類はゼロ同然。電動化は辛うじてスターターモーターを使った原始的なアイドリングストップが入っているだけ。ADASは低速で効くシティブレーキすらなく、丸腰である。
そんな500Cでのドライブにおいては、当然すべての運転行為を自分でやらなければいけない。ヘッドランプはハイ/ロービームの自動切換え機構がないため、対向車や先行車が現れたら自分でちゃんとロービームにしなきゃいけない。ステアリング制御で車線を維持したり、はみ出しそうになると警報を発するなどという洒落たシステムはないので、運転に全集中である。
そんなことはクルマに乗るのであれば当然の話だ。そして誰もが「自分はそんなことにはならない」と思いたがる。が、新しいクルマに乗りつけると、何十年も積み重ねてきたはずの習慣もあっさりと飛ぶのが人間という生き物だ。
単にローテクなクルマを運転するというだけなら、ドライバーにとっては何のメリットもない。だが、500Cはこれで長旅をする気にさせられるクルマだった。なぜなら、底抜けにラブリーなキャラクターで、これを転がすためならローテクな分、自分が頑張るんだという闘志がわくクルマだったからだ。