非力なエンジンとは思えない加速フィール
そして第3点は、走りと乗り心地である。走りはハッキリ言って楽しい。ホイールベース(前後輪の中心間の距離)2300mmなどという乗用車は現代ではほとんど珍品レベルだが、ショートホイールベースってこんなに動きが楽しかったんだと感動したほどだ。
サスペンションは柔らかめのセッティングで、コーナーで早めにインにつけてロールを発生させてやると、そこからの踏ん張りは実に立派なもの。いい感じのアンダーステアを発生させながらクイッと曲がる。
帰路、滋賀と三重を結ぶ国道477号鈴鹿スカイラインを走ったが、跳ねやすい路面だろうがタイトなコーナーだろうが何でも来いという感じであった。もちろんこれは体感的なもので絶対性能が優れているという意味ではないが、185mm幅と比較的余裕のあるサイズのタイヤを履いているのが奏功してか、実際の速さについても結構なものがあった。
タイヤは185/55R15サイズのコンチネンタル「エココンタクト6」。ドライではなかなか優秀なグリップと低騒音を両立していた
エンジンは2気筒875ccターボで、最高出力は85ps。3気筒や4気筒と異なり、「バビイィーン」という独特なノイズを立てるこのエンジンは、数値的には非力だが、この加速フィールがまた快適だった。欧州では一般道の制限速度が80~110km/hと日本よりはるかに高いので、常用する中間加速がショボいと不評を買わないようチューニングをよほど頑張ったのだろう。
長距離移動時の燃費はリッター21~22km/L台と、Aセグメントとしては平凡な数値であったが、これは筆者が堪え性がないことも一因。500Cが楽しすぎて、気が付くと元気に走ってしまっていたのだ。
小さいので狭いルートも楽々(フィアット500C)
また、オープントップがあまりに爽快で、旅程の過半を昼となく夜となく、空力が悪くなるフルオープンで走ったのも原因であろう。1区間、浜松から富士宮まで燃費アタック気味に走ったところ、メーター読み27.3km/L、実測26.9km/Lだった。欠点は市街地では一工夫しないと燃費が落ちやすいことか。
フィアット500C(薩摩半島南端、開聞岳をバックに)