温暖化による気象の急激な変化。首都圏に住む筆者でさえも、最近の豪雨の際の凄まじさには時々恐怖を感じる。まして川や山の近くで暮らす人にとっては土砂災害の恐怖は想像を超えるものだろう。ドキュメンタリーでは土地を離れるかどうかの選択で地元の人たちが迷い、悩み続ける姿が映し出され、一番切実な問題として伝わってきた。
ドキュメンタリーとドラマの両方を観ると、「土地から離れるべき」という『おかえりモネ』の朝岡や菅波のドライな言葉には説得力があると感じる。一方、土地を離れることに割りきれなさを抱く人たちの後ろ髪引かれる思いも理解できる。
自問自答で迷走した末に朝岡は「大事にしてきたことは大事なんです」という結論にたどり着いて百音に伝える。人々が代々継承してきたこと。仕事。こだわり。人間関係。それを捨てて土地から離れるという合理的な選択ばかりが正解ではないと確信する言葉だった。
そこに正解はない。百音は迷い、悩む。土砂災害が頻繁に見舞う土地で暮らす人たちを思いながら、気象について伝える仕事にこれからも励んでいくのだろう。そんな今後が目に浮かんでくるような『おかえりモネ』の第14週だった。
【PROFILE】みずしま・ひろあき/1957年北海道生まれ。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。放送批評誌「GALAC」前編集長。近著に『内側から見たテレビ─やらせ・捏造・情報操作の構造─』(朝日新書)、『想像力欠如社会』(弘文堂)。