国内

セクハラと闘ったトランスジェンダー作家が告白「女の体をゆるすまで」

著者が「全てをさらけ出した」闘いの記録は多くの共感を呼んでいる

著者が「全てをさらけ出した」と語る闘いの記録は多くの共感を呼んでいる

 東京五輪では「多様性と調和」がコンセプトになり、LGBTQを公表した五輪選手が過去最多の183人となった。また「国歌斉唱」を担った歌手のMISIAが性の多様性を象徴するレインボーカラーのドレスで登場したことで、あらためて性的マイノリティへの理解が深まるきっかけとなった。

 しかし、そうした多様性への理解が生まれつつあるのも、ここ数年の話だ。かつては、性的マイノリティの人々は、いま以上に「理解されない苦しみ」の中で生きることを余儀なくされていた。そうした苦しい立場にいる人の声を代弁するかのような作品が公開されて話題を呼んでいる。

〈戦記なんだよなぁ もうこれは。〉〈めっちゃ疲れた。心の支えになるようなマンガだと思う〉〈とても読むのがしんどい作品だけど、価値のある作品〉など発売早々、SNS上では大きな反響が寄せられた。その作品とは7月31日に発売されたトランスジェンダーの漫画家・ペス山ポピー氏の身に実際起こったことを描いたエッセイマンガ『女(じぶん)の体をゆるすまで』(上・下巻)だ。「セクハラ」「パワハラ」というセンシティブな問題と真正面から向き合った同作には、多くの読者から共感の声が寄せられている。

『女の体をゆるすまで』は漫画家のアシスタントとして働く主人公(著者)が職場で受けたパワハラ・セクハラ被害をきっかけに世の中の性差別の問題や、自分自身の性に対する葛藤と向き合っていく異色のジェンダー・コミック。著者のペス山氏が被害を受けたのは約8年前に遡る。

 ある有名漫画家・X氏のアシスタントとして働いていた時のこと。X氏はシャワーを浴びるペス山氏に対して、悪ふざけのように「入るよ」と脱衣場まで入ってきたり、膝の上に乗ってくるなどやりたい放題。3か月後、苦痛に耐えかねたペス山氏は意を決してアシスタントを辞めた。しかし、漫画家として作品を生み出すこともできず、病院の精神科に通いフラッシュバックに襲われる生活を過ごしていたという。

 著者のペス山氏が、当時を振り返る。

「勇気を出してアシスタントを辞めたのは良かったのですが、当時の私は『女に生まれたのが悪い』『女の体だからそんな目に遭うんだ』と自分を責めるようになったんです。それで少しでも中性的な見た目になろうと食べては吐き、また食べては吐くという拒食症のような状態でした。ずっとふさぎ込み、漫画もあまり書けない状態のまま8年近くが過ぎてしまいました」(以下、「」はペス山氏)

 ペス山氏が相手のX氏だけでなく、自身の「女性の体」を憎んだのは理由がある。

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン