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デルタ株「学校での感染爆発」で予想される混乱「コロナ差別」の懸念も

学校デルタ(共同通信社)

新学期、不安を抱えたまま通学する小学生たち(共同通信社)

 ワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないアメリカ。1日あたりの感染者は15万人に上り、死者数は1200人を超える。カントリーミュージックの中心地として知られるテネシー州。そのシェルビー郡(人口約100万人)では、8月9日から学校の新学期が始まった。それからたった2週間で2500人を超える子供が感染し、少なくとも4つのクラスターが発生。テキサス州では一部の学校がまだ授業を始めていないのにもかかわらず、昨年度の同週よりも感染者数は34%多いという。

 新学期のスタートはそれほどまでに感染リスクを高めるのか──アメリカのケースは日本の文科省関係者にも衝撃を与えている。

 夏休みが明け、学校が再開し始めた日本では児童・生徒間で感染が広がらないよう、学校側は分散登校や午前のみ授業、オンライン授業の導入などさまざまな対応に追われている。東京・港区のように、学校での授業かオンライン授業かを選択できるようにした自治体もある。

 政府は抗原検査の簡易キット計80万回分を、9月上旬から全国の幼稚園と小中学校に配る方針を表明。早期発見で学校内クラスターを防ぐのが狙いだ。

 しかし、それで本当に学校が安全になるとは考えにくい。いま、日本で広がっているのはアメリカと同じ「デルタ株」。水疱瘡並みの感染力があり、1人が5~9人にうつすとされている。血液内科医の中村幸嗣さんが説明する。

「もともと子供は、新型コロナの感染受容体であるACE2タンパク質の発現量が少ないため、コロナには感染しづらいとされていました。しかし、デルタ株は子供にも容易に感染し、稀ですが重症化する例も出始めています」

 厚労省によると、20才未満の感染者は7月12~18日では全体の14.7%だったが、8月18~24日には約20%に増加。その間の20才未満の感染者数は2万8999人で、第4波で最多だった5月13~19日の5347人の5倍以上だ。

 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが警鐘を鳴らす。

「感染拡大に学校再開が重なれば、20才未満の感染者が1日1万人を超えることも想定しなくてはなりません。アメリカ全体ではコロナですでに400人以上の子供が亡くなっており、日本もそうなる可能性は充分考えられます。子供のほとんどがワクチン未接種なうえ、デルタ株はアジア人種の方が感染しやすい可能性があるので、もっと深刻な状況になるかもしれません」

 子供の感染者が「1日1万人」──そのとき、学校や家庭で何が起きるのか。

苦しむ子供がたらい回しにされる

 これまで新型コロナは子供に感染しにくかったため、子供同士でうつし合うことは稀で、子供が感染するのは家庭内で家族からうつるケースがほとんどだった。しかし、子供も感染しやすいデルタ株では感染ルートは大きく変わる。

「子供から親や祖父母に感染し、大人の重症者や死亡者が増えることが考えられます。たとえ大人がワクチンを接種していても、ブレークスルー感染する可能性があるので油断はできません。年齢が低いほど感染を広める『スーパースプレッダー』になりやすいという研究報告もあり、小学生以下には特に注意が必要です」(一石さん)

 子供から親や祖父母にブレークスルー感染し、重症化するケースが増えれば、瞬く間に医療崩壊を招きかねない。

 もちろん子供の重症患者の増加も大きな懸念材料だ。感染した場合、まずかかりつけの小児科医に相談することになる。しかし、もちづき耳鼻咽喉科(東京・豊島区)院長の望月優一郎さんは、重症化した子供への医療体制は極めて脆弱だと語る。

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