「子供が重症化した場合は小児病棟で診ることになりますが、小児病棟のある病院は数が少ない。学校が始まって患者数が増えれば、重症の子供も増えますから、瞬く間に対応できなくなると思います。
しかも小児用の集中治療室は一般病棟のICUとは別の『PICU』といわれるもので、大学病院か公立の大きな病院にしかありません。また、小児科医で肺炎や呼吸器が得意な医師も限られており、医師の絶対数も不足しています」
8月17日、妊娠後期でコロナに感染していた妊婦が不正出血。対応できる産婦人科は限られるため受け入れ先がなく、自宅療養中に早産し、赤ちゃんが死亡するという悲劇が起きた。
そのケースと同じように、子供が自宅療養中に容体が急変しても小児病棟の受け入れがなく、たらい回しにされた末に命を落とす――そんな最悪の事態も考えられるのだ。
子供たちの日常生活も制限を受けることになるだろう。
「昨年、緊急事態宣言に伴い公園が封鎖され、遊べなくなりました。このままいくと、同じように封鎖される可能性があります。むしろ、いま封鎖されていない所が多いのが不思議なくらいです。
今後は授業に出席する際には定期的な『PCR検査の診断結果』や『陰性証明』の提示が必要になるなど、よりいっそうの対策が必要になるかもしれません」(一石さん)
混乱を避けるために、いざ学校内で感染者が出たときにどうするかの「基準」作りも必要だ。
「万が一に備えて学級内で何人のコロナ感染が確認されたら学級閉鎖にするとか、重症者が2週続けて何人出たら一時的に休校にするなど、きちんとした線引きを、いまから学校単位、地域単位で設けておかなければなりません」(中村さん)
子供をとりまく環境も大きく変わる可能性がある。
昨年、コロナの感染が始まったときには、感染者が会社を解雇されたり、出社を拒否される事態が起きた。医療関係者が子供を保育園などに預かってもらえなくなるなど「コロナ差別」が相次いだ。
「このまま感染拡大が続くと、勤務先などで“子供を学校に行かせている親”が、感染リスクがあるといって敬遠されたり、差別されることも起こり得ます。スーパーマーケットやショッピングモールなどでは“子供同伴お断り”を掲げる施設も出てくるかもしれません」(一石さん)
メンタル面も心配だ。学校に行っても友達と接することができず、公園など外で遊ぶことも禁じられ、塾もリモート授業。もし学校が休校になったら、一日中家のなかで過ごさなければならない。そして、いつ自分が感染し、重症化するかもしれない恐怖。
「子供たちが受けるストレスは相当なもので、うつや引きこもり、肥満、家庭内トラブルなど、これまで予想しなかったような状況が起こる可能性もあります」(一石さん)
コロナ分科会の尾身茂会長は、「学校が再開されれば感染が拡大し、さらに医療が逼迫する可能性がある」と、危機感を露にした。
「子供に感染が広がることで、学校内、家庭内、親から会社……と一気に感染爆発につながることは容易に想像できます。100年前のスペインかぜも、若年層や小学校から一気に感染が広がり、大惨事になりました。今後ますます警戒が必要です」(一石さん)
変異を続け、子供にまで感染が拡大し始めた新型コロナウイルス。「想定外の事態」が起きても子供たちの命を守れるような、しっかりとした体制作りが急がれる。
※女性セブン2021年9月16日号