芸能

NHKドラマ『白い濁流』の佐々木希に腹を決めた女優の顔を見た

佐々木希

これまでとは違うタイプの役柄を好演

 役者が醸し出す雰囲気に変化を感じることは稀にあるものだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
『白い濁流』(NHK BSプレミアム 日曜日午後10時)は薬品メーカーの研究開発最前線で起こる不正やねつ造、隠蔽の闇を描く“社会派エンターテインメント”。

 主人公は若手有望研究者の好並一樹(伊藤淳史)。そのライバルである柏木航(桐山漣)、そして一樹の幼なじみの恋人で新聞記者・河原智子(佐々木希)。3人を軸に薬品メーカー研究開発部で繰り広げられていくスリリングな展開。

 このドラマ、タイトルにある「濁流」がキーワード。「流れはしたたかに僕らを呑み込んでいった」という一樹のセリフが示すように、正しくないことを正しいと呑み込まざるを得ない濁流に身を置いた時、人はどうすればよいのか……。

 一樹は真面目な研究者で、「悪いことをしよう」なんて考えていない純朴な人。しかし、組織の中で必死に研究に没頭しているうちに、権力争いや利権の構造の中に組み込まれ気付いた時にはもはや自由に動けなくなっている。助教授職のポスト争い、企業と研究現場の癒着ぶり……大学ノートに細かく記された実験内容は、オリジナル研究の証拠。その貴重なラボノートを「渡せ」「いや渡せない」と、過去にどこかのニュースで見たようなシーンも登場してくる。濁流に巻き込まれていくお人好し。そう、この社会の縮図です。

 流されていく一樹を、必死にとどめようと「杭」になるのが幼なじみの新聞記者・河原智子。演じるのは佐々木希さん。その切れ味の良い演技が視聴者の耳目を惹き付けています。

「世の中に声にならない声がいっぱいあって、それを伝えるために記者になった」という智子のセリフ。演じる佐々木さんを包む空気は、これまでとはちょっと違う。スパっと爽快で男性的とも言える身のこなし。腹から声を出して素早く動く。サバサバとした口調が小気味良い。

 これまで佐々木さんといえば絶えず「色白の美人」「可愛い」「スタイルがバツグン」「似合ってる」と褒められ、SNSに写真をあげれば容姿についてのリアクションが集中していました。斜めから言うと、演技者としてよりも容姿の方がどうしてもアピール力が強かったのかもしれません。本人の意志はまた別として。少なくとも多くの人の目は、彼女の美しさにばかり吸い寄せられていた。

 しかし、このドラマの中では何か違う。「役者・佐々木希」として勝負に出た感すらある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
追悼 釜本邦茂さんが語っていた“理想の最期” 自身の両親のように「誰にも迷惑をかけず逝きたい」と話し、「葬儀ではマツケンサンバを」と笑顔で語る一幕も
NEWSポストセブン
ベッド上で「あー!」
《大谷翔平選手の“アンチ”が激白》「すべてのアンチに、アンチとしての覚悟を持ってほしい」地獄の応援芸・740km超えマラソンでたどり着いた“アンチの矜持”
NEWSポストセブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト
夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
痩せる前のエヴィヤタルさん(インスタグラムより)
「弟はもはやガイコツ」「この穴は僕が埋葬される場所だろう」…ハマスが“人質が自分の墓を掘る”動画を公開し世界各国から非難噴出《飲まず食わずで深刻な飢餓状態》
NEWSポストセブン
本州に生息するツキノワグマ。体長120~180センチほど。最近では獣害の被害が増えている(イメージ)
《襲われる被害が多発》クマに悩まされる養蜂家たちが告白 「今年はあきらめるしかない…」「槍を作って山に入るヤツもいる」
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン
昨年に第一子が誕生したお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行、妻・沢井美優(右・Xより)
《渋谷で目立ちすぎ…!》オレンジ色のサングラスをかけて…ティモンディ・高岸、“家族サービス”でも全身オレンジの幸せオーラ
NEWSポストセブン