一方、3回目接種には慎重になるべき人もいる。
「前回の接種時にアナフィラキシーの症状があった人は、3回目により激烈なアナフィラキシーを引き起こしてしまう恐れがあるため要注意で、避けたほうがいいでしょう。
また3回目のワクチンの種類にもよりますが、高齢者は血管がもろく、血管が詰まってしまったりすることで血栓ができるリスクがあります。1回目や2回目の接種時に血栓性の頭痛や手足のしびれといった症状が出た方については、注意が必要です」(前出・一石教授)
海外はどうなっている?
中東やヨーロッパ各国、アメリカではすでに「3回目接種」の動きが加速しているが、一方で懸念の声もあがっている。医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏が語る。
「アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)は、免疫力が低下した人たちに対して3回目の追加接種を承認しましたが、一般向けに広く接種することについては『現時点で勧めていない』と慎重です。
WHO(世界保健機関)は、先進国で3回目接種の動きが進む一方、途上国では1回目のワクチンすら手に入りにくい状況があり、全世界で1回目接種を普及させることより、自国の追加接種を優先することでパンデミックの世界的な収束から遠のくとの懸念を示しています。海外では、先進国の性急な3回目接種によってより危険な変異株が発生する可能性も指摘されています」
国内のワクチン接種においても同様の議論がある。久住医師が語る。
「日本においてワクチンの3回目接種を優先させるか、1回も打ってない人たちに回すかといわれると、私は後者のほうが有効だと考えます。免疫不全の方の家族や身近な人がワクチン接種を希望しても1回目すらまだできないという状況が実際にあります。
今、妊婦への優先接種が進んでいますが、同居家族は多くの自治体で優先接種の対象外です。それではブレイクスルー感染は防げない。生活の実情に即していないワクチン接種のあり方は、感染拡大を収束させるとはいえないでしょう」
いつ、誰が接種すべきか──それを判断しなければならないようだ。
※週刊ポスト2021年9月17・24日号