杉村:なるほど、リーダーってとかく「俺が俺が」ってタイプが多いけど、国民が疲れている今の時代は、岸田さんみたいな国民に寄り添うタイプも重要ですね。その意味では、総裁選立候補会見では、国民から聞いた声を記した「岸田ノート」を掲げました。するとそれが思わぬ注目を集めて、ツイッターのトレンド入りしました。
岸田:そうそう。これね(と背広のポケットから一冊のノートを取り出す)。
杉村:うわ、すごい! これが岸田ノートですか!?
岸田:そうです。自民党が野党になった2009年の翌年から、国民から聞いたいろんな声をノートにメモしています。もう10年あまりで都合30冊近くになりますかね。最近ではコロナに苦しむ若手事業者や保育園の経営者、ほとんどキャンパスに行けていない大学生から聞いた話などが書いてありますよ。やはり政治は机の上で考えてもわからないことだらけなので、実際にいろんな人の話を聞く必要があります。
杉村:総裁選の最大の争点といえるのがコロナ対策です。岸田さんの目指すコロナ対策で菅首相とはここが違う! というのはどんな点でしょうか。
岸田:菅首相に足りなかったのは、コロナ対策の全体像を示すことです。人流抑制を迫りながら経済対策は小出し細切れで、国民のみなさんは何をめざしていつまで我慢すればいいかわからないから、不満が出るし疲れてしまう。緊急事態やまん延防止等重点措置だってもう何度も出て、意義や効果がよくわからなくなっていますよね。
杉村:東京は今年になって何の宣言もかかってないのは、数週間しかありません。
岸田:だからこそ見通しが必要なんです。私はまずワクチンの接種と経口治療薬を進展させて、年内にコロナを落ち着かせたい。そこまでを乗り切るため、医療難民を出さないように野戦病院を開設するなどの病床確保を進め、少なくとも来年春までを見通して数十兆円規模の経済対策を打ち出します。「コロナ対策は今この地点で、もう少し我慢すればここにくる」という全体像と見通しを示すことで、国民のみなさんに納得してもらいたい。
杉村:マラソンで言うならいま30km地点で、あと10kmほど頑張ればゴールだと。そうしたことを示すということですね。
岸田:その通りです。それで年末までにコロナを落ち着かせつつ、コロナと共存するしくみをつくります。例えばデジタルワクチンパスポートでワクチン接種済みの人はイベントや商業施設により簡単に参加できるとか、いつでも無料で利用できる無料PCR検査所を拡大して、国民ができるだけ普通の生活を送れるようにしたい。