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2021.09.16 16:00  週刊ポスト

すみだ北斎美術館【1】70代で描いた「これぞ浮世絵」に壇蜜も圧倒

本牧の岬(神奈川県横浜市)あたりを描いたものとされる葛飾北斎の『賀奈川沖本杢之図』(C)Forward Stroke

本牧の岬(神奈川県横浜市)あたりを描いたものとされる葛飾北斎の『賀奈川沖本杢之図』(C)Forward Stroke

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・墨田区のすみだ北斎美術館の第1回。2人は葛飾北斎が描いた感性豊かな浮世絵に魅了される。

壇蜜:葛飾北斎『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』は世界で愛される、これぞ浮世絵というべき作品ですね。

山下:躍動的に逆巻く大波と波間に望む富士山。静と動、遠と近の対比で自然を雄大に表現しています。

壇蜜:波の荒ぶりと水飛沫に、船に乗っている人たちから「うわぁ~!」と悲鳴が聞こえてきそうです。

山下:大波に翻弄されているのは江戸へ鮮魚を運ぶ押送船。空、雲、波、富士山、船、人と考え抜かれた構図です。北斎がこの絵を描いたのは70代前半でした。

壇蜜:どんな変遷でここへ到達したのでしょうか。

山下:それでは振り向いてみましょう。すみだ北斎美術館の常設展示室では北斎の生涯に沿って作品が紹介され、『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』の向かいには40代半ばに描いた『賀奈川沖本杢之図』がありますよ。

壇蜜:わっ、盛り上がる波の原型が感じられます。ただ、波に意思が宿っているような70代の描写と比べると、波の先端に丸みがあるなど大雑把な印象です。

山下:北斎が鉤爪型の波頭を描き始めた頃で、当時の中国の技法が反映されています。これ以降、表現が磨かれて波が生き物めいてきますが、鉤爪型を紋様としてではなく風景として描く発想力が北斎の柔軟な感性ですね。

 常設展示室では作品保護のため実物大高精細レプリカの展示ですが、9月26日までの特別展『THE北斎』展で実物でも波を見比べることができます。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●すみだ北斎美術館
【開館時間】9時半~17時半(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜(祝日、振替休日の場合は翌平日)、年末年始
【入館料】AURORA(常設展示室)400円 ※企画展は展覧会により異なる
【住所】東京都墨田区亀沢2-7-2

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年9月17・24日号

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