「このままで行ったら、日本の映画界は世界中に負けちゃうんじゃないかという気がするんです。時代がどんどん変わってくる中で──僕にもこうしたらいいという答えがあるわけじゃないんですが──自分も含めてやれることはいっぱいあると思う。
それを、非力だけども、自分の中ではこれからやっていけたらと思っています。現場でもそんな話をしながら、何か突破口ができたりするんじゃないかと。
全くのド素人の僕がいきなり映画の主役になったのがいい例なのですが、これをやればこれになるという確かなものってないんですよね。動いて突破口を開くことで、新しい世界に繋がっていくのかなと。
でも、今は情報が多いから、こうしたらこうなると先に考えて、新しいことに進まない。それは僕もそうなんです。それで生きる世界が狭まってしまう。
それは役者の仕事だけじゃなくて、スタッフの地位や生活の保障もそう。日本は凄く遅れています。底辺が上がらないと上も上がらない。僕も全くの底辺のフリーだったから、なおのことそう思います」
【プロフィール】
春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2021年10月1日号