ライフ

すみだ北斎美術館【2】最新技術で蘇る北斎作品「グッと身近に」と壇蜜

葛飾北斎『須佐之男命厄神退治之図』推定復元図 すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎『須佐之男命厄神退治之図』推定復元図 すみだ北斎美術館蔵

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・墨田区のすみだ北斎美術館の第2回。晩年の葛飾北斎が描いた最大級の復元作品を鑑賞した。

山下:すみだ北斎美術館の常設展示室を飾るメインの作品のひとつが『須佐之男命厄神退治之図』。須佐之男命が厄神を退治し、病や凶事を起こさないよう証文を取る様子です。

 86歳を迎えた葛飾北斎が描いた晩年最大級の作品で、大正12年の関東大震災で焼失した板絵額の推定復元図です。

壇蜜:復元図だから、ここまで色が鮮明なのですね。

山下:美術誌『国華』240号(明治43年刊)のモノクロ資料などを基に、晩年や病気平癒の絵馬ではどんな色を使っていたかなどの考証を重ねて、最新のデジタル技術で彩色を復元しています。

 常設展示室では作品の褪色を防ぐため、他の展示作品もすべて実物大の高精細レプリカで構成されています。

壇蜜:フロアのタッチパネルもデジタルならではの面白さがありますね。ゲーム感覚で遊びながら『北斎漫画』などの作品に親しんだり、絵を部分的に拡大して理解を深めたりと、絵の世界がグッと身近に感じられる。

 作品ゆかりの地を江戸の地図で巡るタッチパネルでは、新吉原への道中や遊興の様子が描かれた長い絵巻も手元で見られます。

山下:全長約7mの北斎肉筆の巻物で、9月26日までの特別展『THE北斎』展にも出展されている『隅田川両岸景色図巻』ですね。

 長らく行方不明の“幻の絵巻”でしたが平成27年に海外で発見。約1世紀ぶりに生誕の地へ里帰りし、すみだ北斎美術館に収蔵されています。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●すみだ北斎美術館
【開館時間】9時半~17時半(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜(祝日、振替休日の場合は翌平日)、年末年始
【入館料】AURORA(常設展示室)400円 ※企画展は展覧会により異なる
【住所】東京都墨田区亀沢2-7-2

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年10月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト