一方、「社会的孤立」は、自分で何とか解消できる部分もある。以前、安楽死問題で対談した脚本家の橋田壽賀子さんは、「友だちはいらない」と言い続けていた。夫に先立たれてから一人暮らしだったが、行きつけのレストランのシェフや、スポーツジムのトレーナー、仕事関係の人など、さまざまな人たちとのつきあいを続けていたそうだ。
心の中をさらけだすような濃厚な人間関係ではなく、ほどよい距離感のゆるやかな関係があることが、老いを生きるうえでは、大事なセーフティネットになる。それは、人によっては介護サービスになるかもしれないし、顔なじみのご近所さんかもしれない。
結局、橋田さんは、豪華客船の旅を楽しんだり、好きな仕事をして人生をまっとうした。安楽死は必要なかった。老いを楽しむ「老い楽死」と言ってもいい。
新型コロナの巣ごもり生活は老いの疑似体験
コロナ禍の巣ごもり生活が1年半に及んでいる。自由な行動が制限され、「死」を身近に感じるこの経験は、まるで「老い」の疑似体験だ。実際、老いを進めてしまった中高年も少なくない。いわゆる「巣ごもり老化」である。
この状況のなか、ぼく自身は次の5つを実践するようにしてきた。
【1】有酸素運動(ウォーキング)と筋トレで体を動かす
【2】ネガティブなことを言わない
【3】新しいことにチャレンジする
【4】意識的に笑顔を作る
【5】人の助けになることをする。
これらを心がけることで、家の中の空気がよくなった。こうやって自分自身を上機嫌にすることは、老いを快活に生きていくうえでも大切なことではないだろうか。
ところで、最近、もう一つ項目を加えたいと思っている。【6】積極的に年齢をサバヨミすることだ。ただし、「鎌田實37歳です」(実際は73歳)などと言うと、「記憶障害」と診断されてしまうので、注意が必要である。
※週刊ポスト2021年10月1日号