ライフ

孤独とストレスは肥満より死亡リスクが高い 一人暮らしでの対処法

「孤独」や「孤立」をどう対処するか(イメージ)

「孤独」や「孤立」をどう対処するか(イメージ)

 どのように老い、死を迎えるかを考えたとき、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師は、自分自身を上機嫌にして老いを楽しむ「老い楽死」がよいと思うようになった。老いを楽しむための障害として立ちはだかるストレスや孤独は、どうやって回避できるのかを解説する。

 * * *
 老化を進める生活習慣として、運動不足や食事の偏り、肥満、喫煙などがあるが、過度なストレスもその一つである。

 ストレスは全身に慢性炎症を起こし、それが高血圧や動脈硬化、脳卒中、あるいは脳細胞の慢性炎症によって認知機能の低下などの原因になるといわれる。最近はがんも慢性炎症が関係しているという。

 もう一つ、見過ごせないのが、「孤独」や「孤立」である。アメリカのブリガムヤング大学は、340万人以上のデータから、「孤立」や「社会的孤立」「一人暮らし」が死亡リスクを高めると発表している。これらは肥満よりも健康に悪いというから、想像以上に深刻だ。

 もう少し詳しく言うと、「一人暮らし」の人は死亡リスクが32%高くなり、人とのつながりがない「社会的孤立」の状態だと29%高くなる。「孤独感」があると26%高くなる。

 厚生労働省研究班がアメリカの医学雑誌ストロークに発表した論文を見ると、男女4万4000人を対象にした調査で、社会的な支えの最も少ないグループは、最も多いグループより脳卒中による死亡が1.5倍多かった。

 東北医科薬科大学の福地成氏らの研究によると、妻と死別や離婚した男性、未婚男性は、自殺リスクが高い。この傾向は男性のみで、女性ではそのような傾向は見られなかったのも興味深い。男のほうが孤独に弱いのだろうか。また、中年で独り身になった人は、アルツハイマー病の発症リスクが3倍高いというフィンランドのデータもある。

 孤独は行き過ぎると、ストレスになり、慢性炎症が起こりやすくなる。うつ状態にもなりやすい。ストレスで過食傾向になり、肥満や糖尿病の原因となることも、健康を害し、老化をすすめると考えられる。

「安楽死」よりも「老い楽死」

 いま、家族がいるから大丈夫と思っていても、家族の中で孤独を感じることもある。夫婦二人暮らしでも、どちらかが必ず先に逝き、残された人は一人になる。

 結局、孤独に対処するには、「気」のもちようが重要になるのではないか。老いは個人戦である。一人暮らしでも、同居人がいても、精神的に自立し、一人で生きる覚悟をもつことが必要なのだと思う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン