厚生年金の対象をさらに拡大
国民の多くが「金額が少ない」「自分は将来、本当に受給できるのか」といった不安を抱えている日本の年金制度。岸田氏は、年金制度にもメスを入れる。現在の公的年金制度は、基礎年金(国民年金)と厚生年金の2階建て。基礎年金の財源は保険料と税金で半分ずつを賄っている。基礎年金は満額支給されても生活費には不充分で、低所得を理由に保険料の納付を減免されてきた人たちは、さらに受け取る年金額が減ってしまうのが現状だ。
「そこで“年金制度が盤石でも、生活できない年金額なら意味がない”と、最低保障年金の導入を提唱してきたのが河野さんです。ですが、財源を税金に求めるとなれば、消費税を大幅に上げなければならない。現在より6%程度の増税が必要との見方もあり、党内には“増税は国民の理解が得られない”と難色を示す声が強かった。
対して岸田さんは、現在、厚労省が段階的に進めている、パートやアルバイトなど短時間労働者への厚生年金の適用拡大への取り組みを続けるという現実的な方針を示していました。最終的には働くすべての人が厚生年金に入れる仕組みを考えているようです」(前出・政治部記者)
ただし、厚生年金の適用拡大にも、負担が増す事業者などからの反発が予想される。いずれにせよ、岸田氏のもとで年金にも動きがあるのは間違いない。
女系天皇議論はどうなるか
止まった議論が再開される可能性はあるのだろうか──。女性・女系天皇実現に向けた議論だ。現在、皇室典範は第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めている。そのため、愛子さまには皇位継承権がない。女性天皇実現の議論は、2004年、小泉純一郎総理(当時)のもとに発足した「皇室典範に関する有識者会議」で話し合われた過去がある。
「当時は、1965年の秋篠宮さま以降、男性皇族のご誕生がないことに対する強い危機感がありました。そこで小泉政権は、女性・女系天皇を容認する方向で法案提出の準備を進めていました。ですが、2006年に秋篠宮家に悠仁さまが誕生されたことにより、保守層を中心に“皇室典範の改正は喫緊の課題ではない”と判断されたのです。
その後、総理を引き継いだのが、男系の維持に強く固執する安倍晋三氏だったこともあり、議論は完全にストップ。菅総理もその流れをくんでいたため、表立った発言を避けていました。もう約10年にわたって議論されていません」(皇室記者)
岸田氏は「(天皇陛下は)例外なく男系が継承してきた」として、女系天皇には「反対」を主張している。一方、決選投票で争った河野氏は昨年8月、自身のネット配信番組で “愛子さまをはじめ、内親王のお子さまを素直に次の天皇として受け入れることもあるのではないか”と訴えていたが、今回の総裁選では党内の反発を意識してか、女性・女系天皇の賛否については言及を避けていた。
今後、女性天皇に対する議論がどう動いていくのかにも注目だが、いずれにせよ新総理の手腕に期待したい。
※女性セブン2021年10月14日号