新型コロナウイルスの感染拡大は、働く人の労働環境にも大きな影響を与えている。感染者や感染の疑いがある人に対する職場での嫌がらせやいじめ、いわゆる「コロナハラスメント」が後を絶たない。
日本労働組合総連合会(連合)ではそうした労働者の相談を電話やメール、SNSを通じて受け付けている。なかにはハラスメントの域を超えて、差別や人権侵害にかかわるのではと思わせるような案件もある。以下にいくつか紹介しよう(見出しの後は相談のあった年月)。
◆社長が社員に「夜間勤務」を強制。理由は「夜に出歩くから」(2021年1月)
Aさん(20代男性)の母親にコロナ感染が発覚。その1週間前に、Aさんは同僚と酒席をともにし、ふたりともAさんの母親に車で送ってもらっていた。検査した結果、ふたりとも陽性の判定。ホテルで隔離療養している時に勤務先の社長から「仕事に復帰した場合は12時から21時の勤務に変更する」同意書のサインを、自分だけ求められた。「元の勤務時間である8時半から17時半に戻して欲しい」と言っても、「夜に出歩くのでダメだ」と言われた。
◆陰性だったのに「1人だけ防護服着用」(2020年3月)
関西在住のBさん(30代女性)は、2020年2月、九州方面を3泊4日で旅行後、数日経って38.5度の高熱が出たため病院を受診、勤める高齢者施設を欠勤した。施設からは新型コロナの疑いもあるので4日間出勤停止との連絡を受けた。
その後、PCR検査で陰性判定となり、医師からも新型コロナの心配はないとの診断を受けて、翌日から通常通り出勤しようとしたところ、施設から「5日間は防護服を着用してもらう」と言われた。Bさんは、自分だけ防護服を着用するのには抵抗があるし、変な噂が立たないか不安だという。