脳に与える影響は大きい
私たちがSNSを使うとき、脳のなかでは何が起こっているのか。脳科学者の杉浦理砂さんは、夜間にスマホ画面を長時間眺めることで、睡眠の質にも大きな影響を与えると話す。ブルーライトを脳の中心部にある松果体が感知すると、脳は真夜中であっても「いまは昼間だ」と錯覚するのだ。
「ブルーライトは、可視光の中でも非常にエネルギーが高く、刺激性の強い光です。本来、松果体は夜になると睡眠を促すメラトニンを分泌しますが、これが抑制されます」(杉浦さん・以下同)
また、画面いっぱいに文字や画像、動画が詰め込まれたSNSは、その情報量の多さから脳を疲弊させ、脳の機能そのものを下げるとも。
「SNSへの依存度が高い人は、理性を司る脳の前頭前野の血流が減少していることがわかっています。前頭前野は、感情のほか、判断力、意欲、記憶力などに深くかかわっているため、SNS依存は、これらの機能を低下させる一因になります」
おくむらメモリークリニックの奥村歩さんが注目するのは「もの忘れ」だ。
「脳が情報処理をするには、【1】見聞きしたことや経験をインプットする、【2】情報を整理して脳にストックする、【3】必要に応じた情報をアウトプットする、の3つが必要です。しかし、SNSを利用しているときは、絶えず【1】のインプットのみが行われている状態。脳の働きにおいて最も重要な“情報を整理する能力”が使われず、フリーズしてしまう。
すると、脳に入ってきた膨大な情報は整理されないまま、アウトプットもできなくなる。まるで脳が“ゴミ屋敷”になったような状態です。そのため、脳の情報処理能力そのものが低下し、肝心なときに大切な情報が思い出せなくなるのです」(奥村さん)
事実、2013年に宮城・仙台市と東北大学が中学生約2万4000人の学力データを解析したところ、毎日2時間以上勉強する子供がスマホを4時間以上使うようになると、まったく勉強をしない子供よりも成績が悪くなることがわかった。この研究に大きな意義があると振り返るのは、脳科学者で早稲田大学理工学術院教授の枝川義邦さんだ。
「それまでは、成績が下がるのは、ゲームなどに夢中になって、勉強する時間が足りなくなるからだと考えられていました。しかし、勉強時間の長さよりも、ゲームやスマホにかける時間の方が重要だったのです。つまり、スマホを使うこと自体が脳に影響を与えて、学習効果を下げているということ。おそらく、脳の情報処理機能を低下させているのでしょう」(枝川さん)
脳が疲れて眠れなくなり、感情のコントロール力や記憶力まで下げる。
※女性セブン2021年10月21日号