ライフ

【新刊】ブレイディみかこ氏の新著など、秋に読みたい注目の4冊

 秋の夜長、読書に勤しむのも楽しみ方の一つ。涼しくなってきて、気持ちのいいこの季節におすすめの新刊4冊を紹介する。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
ブレイディみかこ/新潮社/1430円

 教育は成果が出るまで時間がかかる。成果とは偏差値なんかじゃない。人間形成のこと。子供の可能性を信じ、さまざまな取り組みをする英国の公立校のあり方を描いた前作は80万人の感動を呼んだ。続編である本書でもリサイクル、ノンバイナリー(性別を規定しない生き方)、学校委員の選挙、音楽祭などを通して個が成長するとはどういうことかを瑞々しく描く。また落涙。

『一人飲みで生きていく』

『一人飲みで生きていく』

『一人飲みで生きていく』
稲垣えみ子/朝日出版社/1694円

 旅行と食事は男連れで。と豪語する友人がいて、なんて不自由な、と思ったことがある。とはいえ女性の一人飲みはハードルが高い。この壁に挑んだ体験記で、試行錯誤のすえ掴んだ12カ条の極意を披露する。自分を大きく見せない、スマホを出さない、料理と酒に集中して味わう、感謝を伝えるなど。ミニマム生活を実践、冷蔵庫を持たない著者の家飲み用つまみに目を奪われる。

『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』

『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』

『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』
北村紗衣/ちくま新書/902円

 どうやったら批評文が書けるようになるか。カルチャーセンターに通わなくてもそのコツが体得できる。でも批評文を書きたい人ってどれだけいるの? 批評は対象(文学や映画、スポーツなど何でも)を他者と楽しくシェアするコミュニケーションの一種とあり、ナルホドと膝を打つ。一本の映画を巡って教え子とする批評合戦が実践的。情報と批評のバランスが読者を誘い込む。

『きみはだれかのどうでもいい人』

『きみはだれかのどうでもいい人』

『きみはだれかのどうでもいい人』
伊藤朱里/小学館文庫/792円

 県税事務所は市民に逆ギレされるストレスフルな職場。そこで働く25才で主席入庁の中沢環、環の同期で心の病を経て復帰した染川裕未、彼女達の母親世代であるパート勤務の田邊陽子、児童相談所に異動する堀主任が4章を紡ぐ。どの章にも出てくるのがトロくてノロいイノセントな須藤深雪。彼女を写し鏡に、虚勢を張らなければ自己が保てない現代をヒリヒリと考えさせる。

文/温水ゆかり

※女性セブン2021年10月28日号

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン