上海 CCG EXPO 2021でのコスプレイヤー(Imaginechina/時事通信フォト)

上海 CCG EXPO 2021でのコスプレイヤー(Imaginechina/時事通信フォト)

「中国は嫌いだし悔しいけど、金出さない日本が悪いんですよ。それは知ってるでしょう」

 氏の声色が変わって少し強くなる。そのとおりで私も知っている。ゲームやドラマCDなら若手だろうと人気実力相応のギャラを出せるが、アニメとなると決められた額しか払えない。そもそも払いたくても現場に金は来ない。アニメに限らず日本中、もう何十年も現場に金が降ってこない。知らない誰かが知らないうちに抜いた残りの金しか降って来ない、これはエンタメに限らず日本のIT、建設、運輸、製造、派遣に従事する者すべてが実感していることだろう。

 先のルポ含め、本稿は忌々しい中国礼賛などではなく警告である。アフターコロナの中国はさらに本気を出してくる。軍事力を背景にした米中の衝突も気がかりだが、各々の一個人にもチャイナパワーは身近な危機である。アニメーターやイラストレーターはいい、原稿料が高いならしたたかに請ければいいだろう。声優もしかりだ。相応のギャラをくれる限りは、これまたしたたかに声の職人としてお仕事に邁進すればいい。

 ただし中国人は払いたい相手には払うが、価値のない相手には容赦ない極端な優勝劣敗気質だ。若手女優のギャラが1本10億を超える陰で何の取り柄もない一般市民は虫けら同然というディストピアが中国だ。中国企業と多くの企業や個人がつき合うのは商売としてありだが、労働者としての雇用契約なら賛成しない。労働者となると一部を除けば中国人の給料は安い。それでもいずれ、一般サラリーマンもそんな中国資本に会社ごと飲み込まれるかもしれない。それどころか日本人の人買いによって中抜き後の「安い日本人」として売り飛ばされるかもしれない。かつての「安い中国人」が逆転し始めている。日本政府はチャイナリスクから民間を守ろうとしていない。むしろ裏で媚中迎合しているのではとアメリカ始め同盟国から不審がられる始末だ。

 30年間平均所得が変わらず、中抜きという泥棒を産業全体にのさばらせたのは日本の為政者とその尻尾どもである。特殊な話でもなんでもない。ジャパニメーションの危機は、そっくりそのまま日本人の身近な危機であり、その端緒である。文化もまた戦争なのだ。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。かつて1990年代から月刊「コンプティーク」を始め多くのアニメ誌、ゲーム誌や作品制作に携わった経験を持つ。近年は文芸、ノンフィクションを中心に執筆。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)他。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
大河撮影前に2人で北海道旅行をしたという(時事通信フォト)
吉高由里子、セレブ恋人との結婚は『光る君へ』クランクアップ後か 交際は事務所公認、大河スタッフも“良い報告”を楽しみに
週刊ポスト
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン