芸能

『スター誕生!』の舞台裏 中森明菜はテレビ予選で2度不合格だった

『スター誕生!』のディレクター、プロデューサーであった金谷勲夫氏

『スター誕生!』のディレクター、プロデューサー・金谷勲夫氏が当時を振り返る

 1971年から1983年まで、12年間続いた伝説のオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系)。そのすべてにディレクター、プロデューサーとして関わった金谷勲夫氏に舞台裏を聞いた。(前後編の後編)

3度目の正直だった中森明菜の合格

 番組開始時は小学生から70代まで歌自慢の老若男女が参加。金谷たちはどういう基準で選ぶべきか迷っていたという。そこに現われたのが当時13歳の森昌子。1971年10月下旬のことだった。

「彼女は都はるみの『涙の連絡船』を歌ったんですが、聴いた瞬間、その上手さにゾクっとした。ついに求めている人が来たっていうのかな。ご両親からは『中学を卒業するまで待ってほしい』と言われましたが、学業を優先することを約束して、なんとかご承諾を得ることができました」

 森のデビュー曲『せんせい』(1972年)は大ヒット。その成功が番組の方向性を決定する。森と同学年の桜田淳子、山口百恵、伊藤咲子、岩崎宏美など、10代のアイドルが続いたからだ。

「最初に昌子が出たから、同世代の子たちが『私も歌手になれるかもしれない』と思った。今でも語り草なのは桜田淳子。予選会で順番待ちをしている時から光って見えた。結果的に史上最高の573点で合格し、決戦大会でも歴代最多の25社のスカウトを受けました」

 番組から巣立った歌手は88組92人。今でも全員の顔と名前をそらんじている金谷に、特に印象に残る卒業生を訊いた。

「ピンク・レディーは社会現象になって、かわいそうなくらい忙しくなった。ディレクターの吉岡正敏君は自分の番組に来た2人を少しでも休ませようと、リハーサルの時は代役を立てていました。

 中森明菜はテレビ予選に2回出場したけど、いずれも不合格。3回目に来た時は否定的なスタッフもいましたが、過去2回よりも断然よかったからテレビ予選に通したの。そうしたら中村泰士さんが惚れ込んで満点をつけた。それがデビューに繋がったんです」

 あまたのスターを送り出した『スタ誕』は1983年9月に終了。その背景を金谷はこう語る。

「自分でハガキを出してオーディションを受けるのはダサい。それよりは街でスカウトされる方がカッコいいという風潮になってきた。視聴率は2桁ありましたが、時代の変化を感じて、幕を下ろすことにしたわけです。“熱い12年でした”」

【プロフィール】
金谷勲夫(かなや・いさお)/1943年生まれ、富山県出身。1967年、日本テレビに入社。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『世界まる見え! テレビ特捜部』などの番組を担当。

取材・文/濱口英樹

※週刊ポスト2021年10月29日号

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン