確かに歩きスマホは褒められた行為ではないが、私的に罰を暴力の形で加えるのはおかしな行為だ(イメージ、AFP=時事)
「スーツ姿の小さいおじさんです。ぶつかってきました。とっさに避けましたけど、わざとですね、ヨレヨレのスーツで、ぜんぜん強面とかじゃありません」
なるほどガラの悪い場所とか、いかついおじさんとか関係なく「ぶつかりおじさん」は出没するらしい。別のWEBクリエイターの女性からも報告があった。
「3回ありますね、すっぴんにパーカーとか、気合いの入ってないというか、冴えない格好のときにやられてます。おとなしそうなタイプを狙ってると個人的には思います」
その3回は大手町、池袋、上野とのことでこれまた都心まんべんなく「ぶつかりおじさん」は出没する。もちろん普通にぶつかってしまうこともあるが、この3回は明確な「ぶつかり被害」であるという。
すり抜ける時に肩を当てたら睨んできた。向こうが悪いのに
それにしても、なぜ多くはおじさんなのか、「おじさんもそんなことをするのはごく一部」という当たり前の話はともかく、「ぶつかりおじさん」と揶揄されるほどに、また先の逮捕者以外にも2019年に捕まった49歳など、実際はおじさんばかりであり、捕まったそばから警察で罪を認めている。自覚はあるということだ。筆者もおじさんなので釈然としないが、なぜなのか。いちいちぶつかりに行く必要がまったくない。
「イラッとしたんですよ。延々スマホを見ながら前をのろのろ歩いてる、ホームと階段の間が長くて狭いんで抜かせない、なんて女だと」
と思ったら筆者の後輩に「ぶつかりおじさん」がいた。常習ではない、たまたまだと言っているが嘆かわしい話、43歳にもなって何をしてるのか。
「ほんとそれ1回だけです。すり抜けるときに肩を当てたんですけど、女は睨んできました。向こうが悪いのに」
シンプルだが参考になる。つまり自分が正しく、相手が悪い。批判されても仕方ないながらスマホで歩き、仕事で忙しい、打ち合わせに遅れそうな彼を邪魔した、そういうことか。
「はい。でもそれっきりです、ほんとムカつきました」
女性ではなくたとえば男性、まして大男ならしていないのでは?
「そりゃそうです。相手は見ますよ。ながらスマホでも入れ墨入ってるのとか怖いじゃないですか。」
筆者は彼のことをそれなりに知っているが、その当時はあまり待遇のよくないウェブ系の会社にいた、それも原因では?
「ありますね、ストレス溜まってました。でもずっとやってたわけじゃないですからね」
ということでいまはやってないかもしれない彼の話だが、やはりシンプルにストレスの溜まった、独りよがりの鬱憤ばらしということか。だが本当にやめたほうがいい。もし相手が転んで怪我でもしたら、まして駅のホームなら相手が転落して電車に轢かれかねない。そもそも他人様になんてことを。