ライフ

【新刊紹介】皇室の未来を考える『女性皇族の結婚とは何か』など4冊

新刊

庶民とは違う皇族の結婚。周囲がこんなに騒いでいいいものやら…『女性皇族の結婚とは何か』

 肌寒い日が増え、日ごとに秋の深まりを感じるこの頃。読書の秋を楽しむための、おすすめの新刊4冊を紹介する。

『女性皇族の結婚とは何か』
工藤美代子/毎日新聞出版/1760円

 若い人ほど眞子さまを祝福する一方、伝統やノブレス・オブリージュ(高貴な人ほど義務がある)を意識する世代は複雑。そんなことを論じる一冊かと思いきや、著者は迂回路を取る。貞明皇后(大正天皇の妻、昭和天皇の母)の生涯を振り返るのだ。そこには貞明(ていめい)皇后のような賢明な人がおられたら、大きな騒ぎにならなかったのにという無念な思いが潜む。皇室の未来を考えたい。

新刊

『民王』11年ぶりの続編。現実を誇張した不条理劇に笑う『民王 シベリアの陰謀』

『民王 シベリアの陰謀』
池井戸潤/KADOKAWA/1760円

 冒頭で大笑い。総理大臣武藤泰山の息子で漢字の読めない翔が答弁に立ち、議場の爆笑と失笑を買うのだ。ツカミは充分。高西(こうさい)環境大臣が謎のウイルスに感染し凶暴化、飛行機で隣席だった並木教授も凶暴化する。ウイルスはどこから? 翔や秘書の貝原達はシベリアに飛ぶ。ウイルス、パニック、緊急事態宣言、陰謀論。コメディタッチながら現実の戯画化には笑えない重みも。

新刊

映画史を辿りながら、やくざ映画を再発見。北野武監督のスピーディな新感覚映像もお薦め

『やくざ映画入門』
春日太一/小学館新書/902円

 卒論がやくざ映画だった三浦しをんさん。女性だってやくざ映画は好きだ。やくざ映画が庶民を慰めた時代があった。高倉健、若山富三郎、渡哲也、菅原文太など名だたるスターを輩出。金字塔は深作欣二監督の『仁義なき戦い』。近年では『半沢直樹』の構造がやくざ映画だとする。個の誇りが爆発し、ドンパチの代わりに土下座がある、と。初心者には『アウトレイジ』を薦める。

新刊

擬古文、落語調、いなせな江戸弁。旅ルポから書評まで収納した贅沢文庫

『杉浦日向子ベスト・エッセイ』
杉浦日向子/ちくま文庫/924円

 著者を『お江戸でござる』の解説者として記憶している方も多いはず。病を得て漫画家を廃業(=隠居)、後半生は江戸風俗研究家として活躍した。「江戸の文物に触れる時」普段あまり使わない感性が働き「うれしがるのがわかります」と本書にある。座右の銘は「働かない・食わない・属さない」。最後の晩餐には塩おむすびを所望。質素と質実が人柄の華になる希有な女性だった。

文/温水ゆかり

※女性セブン2021年11月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン