ライフ

無職の息子と暮らす70代男性「大学まで出したのに正社員にもなれないなんて」

中国などアジアでも人気が高い「クレヨンしんちゃん」。連載やアニメ開始当初、高卒で課長の父・ひろしは冴えない男の代表だったのが近年は理想のパパに(Imaginechina/時事通信フォト)

中国などアジアでも人気が高い「クレヨンしんちゃん」。連載やアニメ開始当初、高卒で課長の父・ひろしは冴えない男の代表だったのが近年は理想のパパに(Imaginechina/時事通信フォト)

「子どもの貧困」が社会問題としてたびたび取り上げられるようになって久しいが、そんなことはあり得ないという人たちがいる。夏休みになると給食がないので昼ご飯を食べていないとか、必要な文具が買えない子どもがクラスに何人もいると聞かされても「今の日本で本当なのか」「信じられない」と言い、自分も安月給だったが中流だったのだから、いまもそんなに変わらないはずだと言う。その人たちの多くは、すでに仕事をリタイアした世代だ。俳人で著作家の日野百草氏が、安月給と自嘲してもマイホームをもてた世代の人たちに、どうやって現役時代を過ごしてきたのかを聞き、今と何が決定的に違っているのかを探った。

 * * *
「私なんか年収400万しか無かったけど子どもを2人育てたよ。それなのに、おかしな国になったもんだ」

 70代で年金暮らし、悠々自適の丸本光二さん(仮名)に都下の駅ビルにある喫茶店でお話を伺った。目的は私事の別件だが、ついでに現役時代の話を聞いてみようと考えた。彼は中堅企業に勤め、高卒のサラリーマンで男の子2人を育てあげた。

「贅沢はできなかったけど、東京の端っこにマイホームも買ったし女房は専業主婦で何の心配もいらなかったね。次男がグレたくらいかな。40代無職、まだ家にいるよ」

 次男との仲は悪く家で顔を合わせても話はしないという。そちらも気になったが、それ以上に丸本さんのサラリーマン生活のほうが気になった。彼は、世代や子どもの男女構成は異なるが、立ち位置的にはまさに『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし(中小企業の商社勤務、係長、マイホームとマイカー、妻は専業主婦で子あり)であった。社会事情の変化とネットを中心とした「ネタ化」により勝ち組と誇張されているので、あくまでイメージとしての話である。連載当初のひろしは勝ち組ではなく、しがないサラリーマンという設定だった。

「サラリーマンなんてなりたくなかったよ、お小遣いも定年間際まで1万円で都心まで1時間以上だ」

 いかにもな昭和のサラリーマンだった丸本さんは高度成長期の満員電車に揺られ、会社人生を全うした。

「仕事なんかしたくなかったからね、総務の課長止まりだった。課長と言っても部下は少なくて名ばかりだったし、2000年くらいからは派遣で来るお姉ちゃんたちのまとめ役だった、まあ窓際だね」

 自嘲もあるのだろうが窓際で定年というのもまさしく昭和、丸本さんの定年は2000年代で平成だが、丸本さん的にも感覚はずっと昭和の自覚があるという。

「20代、30代の一番いい時代を昭和に過ごしたからね、会社は嫌だったけど楽しかったよ」

関連記事

トピックス

出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッター役を演じる稲垣吾郎
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演、稲垣吾郎インタビュー「これまでの舞台とは景色が違いました」 
女性セブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン