一方、ゴールデンタイムのバラエティに関しても、SNSやYouTubeなどで自ら発信する俳優が増えた影響もあって、以前より違和感なく番組に溶け込めるようになりました。「いかにも番宣で出ています」「お客さん扱い」という印象は薄れ、視聴者も受け入れやすくなっているところがあります。
「放送と配信の番宣は別」という意識
民放各局の中で浸透しているのは、主に「新番組を知ってもらう場所をとにかく増やす」「放送と配信のPRを分けて考える」「配信視聴者向けのPRを作らなければいけない」という3点の意識。
現在は、新番組を知ってもらうための場所をテレビの中だけでなく、ネット上のさまざまな場所に作ることがドラマ番宣の前提となっているのです。また、「長年行われてきた放送での番宣は、テレビ好きに向けた今なお効果的なもの」という認識は共通していて、さらに「放送を見てもらうことが難しい人に向けた、配信で見てもらうためのPRが必要」という意識が浸透しました。
「テレビでの放送」と「ネットでの配信」での番宣を両輪にするという、まさに温故知新の形に変わっているのです。これらの努力もあって、「下がり続けている」と言われていた視聴率も下げ止まりの傾向があり、ツイッターのトレンドランキングをドラマ関連ワードがにぎわせるようになりました。
また、深夜帯ではありますが、TBSが新たにはじめた帯ドラマ『この初恋はフィクションです』は、YouTubeで全話配信されています。「事前の番宣もするけど、『TVerで一週間』ではなく、『YouTubeで常時全話』の配信にすることで番宣につなげたい。できれば続きはリアルタイムの放送で見てほしいけど、それが難しければYouTubeでもいいのでみてください」というスタンスがうかがえます。
このようにまだまだネット上での番宣は進化の余地があるだけに、今後も人々の目にふれる機会が増えるような新たな策が見られるでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。