「どこまで行っても吉高由里子!」の一定イメージ
これまで多くの作品に出演しているけれど『ガリレオ』(フジテレビ系・2013年)前後から“演者・吉高由里子”のイメージが固定されてきていて、好感を覚えている。俳優によっては役柄に合わせて次々にイメージを覆していくものと、一定イメージを担保する2パターンに分かれる。彼女は完全に後者だ。バラエティ番組で、セリフではない“素”の話をしているときと、ムードが変わらないといってもいいだろう。
昨今、日本の俳優さんたちをぐるりと見渡すと、役柄に合わせて次々に変わっていく演技を評価されることが多いように感じる。吉高さんのようなパターンはごく稀だ。男性で言うと、木村拓哉さんのイメージが近い。「何をやっても(出演しても)キムタク」と言われてしまう、想像がつくパターン。しかしこれらは少なくとも最低限、アジア全体に、名前と演技を知られていることが前提の、超・難関なのである。この類稀なパワーを彼女は持っている。それが米CNNの『世界的に名前は知られていないが演技力のある日本の俳優7人(2010年)』に選出された理由のひとつであったらうれしいな、と思う。
くどくなく地味すぎない素晴らしき造形美
国外に対する憧れなのだろうか。大きな瞳や、際立ったパーツがピックアップされがちな日本の美意識。確かに間違ってはいないけれど、日本人は平安時代から続く、すっきりとした顔立ちがマジョリティーであり、もてはやされていたはず……という思いを晴らしてくれたのが、吉高さんの顔立ちだ。
奥二重で印象に残るパーツはなくとも、全体的にバランス良くまとまった、整ったクールビューティー。リップやドレスでときどき取り入れている、潔い真紅がよく似合うのは、強い色を殺さない適量な美しさがあるから。さらに顔立ちだけではなく、きめ細やかな白肌や、ツヤのある髪の毛などオプションもついてくる。吉高さんは新しい薄顔美の形をつくってくれた。ありがとう、ありがとう。
以上、ほんの一部ではあるけれど吉高さんから放たれる魅力について考えてみた。そんな彼女が主演する『最愛』は、行方不明だった弟が現れて、また新たな展開を迎えた。本当に出演者全員が怪しいかもしれない。まだ酒場へ足を向かわせる週末の金曜は遠そうである。
【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。