声優とその事務所にとってゲームは稼ぎ頭。連動してアニメ制作されることも多い(イメージ、時事通信フォト)
テレビアニメは人気があってもギャラが上がるわけではない
とくにテレビではタレント枠とその他で出演料が大きく違う。たとえば、同じ作品に出演しても、誰もが知る人気若手声優が1万5000円で、ゴリ押しというだけの新人タレントが10万円といったケースはごく普通である。なんだか身分差別のようだが大学教授や作家、何かの専門家といった文化人枠というのも信じられないほど安い。昨今、タレントを減らして文化人や声優を起用する番組が増えたのも、コア視聴率重視への移行と同時にテレビの経費削減という面も大きい。1988年、永井一郎氏が「磯野波平ただいま年収164万円」という雑誌記事を書いたが、多くの声優の待遇はその人気と知名度ほどにはいまも変わらない。
「芸能人と声優の差はやはり事務所の力、バックについた業界の力がモノをいいます。声優事務所なんてどんな大手でも芸能事務所に比べたら吹けば飛ぶような中小零細ばかりですからね、狭い業界ならともかく、巨大メディアに対しての力なんてたかが知れてます」
アニメやゲームの好きな方々からすれば逆だろうが、声優事務所はたとえ大手でも芸能界でくくれば小規模事業者であり、その扱いは出入りの裏方業者に近い。
「人気の若手声優を抱えれば儲かると思うでしょうが、ランクの問題で安いまま据え置かれますからね、その間はランクに縛られないゲームやイベント、アイドル売りなら楽曲や物販で稼ぐしかない。事務所としては若くして売れてくれて嬉しいところですが、とくにテレビアニメは人気があってもすぐ新人のギャラが上がるわけではないですからね」
日俳連(日本俳優連合)に加入している声優事務所はランク制に縛られる。所属声優はどんなに人気があっても、大ヒットアニメの主役であっても3年目までは1本(※一話あたり)1万5000円と決められている。最近のテレビアニメは1シーズン12話、約3か月放送されることが多いが、仮に12話全話に出演すると18万円になる。当たり前だが、1話30分の収録を30分で完了できることはないので、1本あたりの拘束時間はそれなりに長い。ここまでは純然たる出演料のみの話で、これに放送時間や目的の利用率などの上乗せがあるので実際はもう少し貰えるとはいえ信じられないほど安い。
公的な統計は無いため筆者の経験上の知る限りでしかないが、声の仕事で年収400万円あればたいしたプロの声優だと思う。多くは若手を中心に200万円から300万円といったところ、それに満たない声優は声の仕事以外で生計を立てている。もちろん売れっ子になれば若手で年収500万円、スターなら1000万円を超える声優もいるが、個人事業主で国保も年金もすべて自分持ちの自営業と考えればとてもその業界のスター、まして声優の人気や地位と比例しているとは言い難い。これが続くとも限らない。
「普通の社会人並みに稼ぐ声優すら全体から見たら少ないです。その年はよくても次の年にはわかりませんし、安定なんて声優である限り無縁でしょう」