2000年2月、テレビ放映向けのアニメがビデオに転用された際の2次使用料支払いを不当に拒んでいるととして提訴後、記者会見する原告の内海賢二さん(後列右)と裁判を支援する野沢那智さん(前列左端)ら(時事通信フォト)

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 アニメやゲームで見かけなくても企業案件のナレーションを数多くこなすベテラン、その道の売れっ子ナレーターも存在する。ランク制も適用されず実力次第で旬や流行り廃りも少ない。将来的にはこうしたナレーションのプロを目指したいという若手も多い。官公庁や企業、団体、施設などのナレーション業は事務所にとって経営面でありがたい存在である。

「ドル(※アイドル声優)は旬がありますがナレで認められれば年をとっても食っていけます。ただし企業案件は老舗の事務所がガッツリ食い込んで強いですから、新参の事務所が数を確保するのは難しいですね、これも大手の強みです」

 その新参の声優事務所はどんな人が立ち上げているのかというと、独立した元マネージャー(営業)やコネクションを十分に蓄積したベテラン声優などが設立することが多い。大方は元の事務所の所属声優と独立するが、現実は厳しく営業の壁にぶち当たる。

「人気声優とバーターとか、社長がベテランの人気声優なら本人バーターとかでアニメやゲームは引っ張れても、企業案件や広告関係はなかなか食い込めないですね」

声優学校が本業以上のドル箱になれば事務所経営は安泰

 よくドラマやアニメでは、マネージャーはタレントのお世話係みたいに描かれるが、声優事務所の実態はかなり違う。声優事務所のマネージャーにとって、オーディションを除けば営業で所属声優の仕事を取ってくることが最重要である。仕事がなければ事務所も声優も食っていけない。常に新規開拓の姿勢が大事で、現実は某アイドル育成ゲームのような、降ってくる仕事をこなして体調管理とご機嫌取りでプロデューサー面していられるほど呑気ではない。仕事がないのは声優のせいだけではなく営業=マネージャーの責任でもある。
 
「社長を含めたマネが営業下手とか、営業の甲斐なく廃業、解散という零細事務所もありました。他に行ける人はともかく、多くは自然廃業とか、引受先がなくフリーになってネットで仕事を募集するとかですね。人気商売でも底辺は事務所も演者も地獄ですよ」

 氏の経験上の話だが、筆者もこれまで何度か廃業、解散した声優事務所を目の当たりにしている。突然廃業もあれば、所属声優の行き先を確保した上で廃業した事務所もある。突然廃業のパターンは、売上不振はもちろん経営者の不祥事(女性問題、ギャンブル)などのトラブルが多く、未払いのまま多くの声優が一時的に露頭に迷うケースもあった。じっくり準備した上での円満廃業の場合は経営者の高齢化や体調面、潰れるほどではないにせよ自転車操業に先を見通せなくなった、といったケースである。

「(声優事務所としての)本業がイマイチでもうまくいくパターンもありますけどね、とくに声優学校、養成所ですね。あれが本業以上のドル箱になれば経営自体は安泰でしょう。所属の人気声優も学校宣伝のために使います。仕事のないベテランを講師にもできますし」

 いまや養成所ビジネスが声優事務所を支えているといってもいい。声だけで食えているのは300人もいないとされる声優業界だが、毎年3万人以上が声優を目指すと言われている。そんな声優になりたいという若者はもちろん最近は40代の中高年からシニア層まで受け入れている学校がある。演技未経験で40代から職業声優になるのはシステム上もほぼ不可能だが、現実には「声優になれる」と全国各地で募集している。

「志望者は驚くほどいますが、ごく少数のエリートとその他の志望者は最初から内々に分けます。スターシステムに組み込まれる前者と本所属どころか声優そのものになれない後者ですね。残酷ですが、役者の世界はそういうものです」

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