失敗分析には俗人性を排除した、構造的な分析が必要

失敗分析には俗人性を排除した、構造的な分析が必要と荒木氏は語る(写真はイメージ)

──トライ&エラーを繰り返して、成功に近づいていく。トヨタのカローラも「パブリカ」の失敗を経て登場しました。

荒木:トヨタのスピーディな意思決定は学ぶところが多いと思います。最初の失敗を引きずらず、決めるべきタイミングに決める。言うのは簡単ですが、とても難しい意思決定だとも思います。

失敗分析は「ずるい」もの

──名将・野村克也氏が「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と言ったように、失敗には相応の理由があることがよくわかります。ユーザー視点の欠如、競争ルールの理解不足、社内不全といった多角的な視点から、荒木さんは失敗の原因を分析していますが、中でも、通説とは異なる新たな視点を提示するなどの「深堀り」が魅力です。

荒木:たとえばコカ・コーラのニュー・コークは、「20世紀のマーケティング史における最大の失敗事例」と言われ、顧客ニーズを理解できなかった失敗事例として、多くの本で取り上げられてきました。でも今回、できるだけ予見を持たずに、改めて当時の新聞記事や、社長が語った記事などを当たっていくと、ちょっと違うぞと。顧客志向が欠如していたどころか、むちゃくちゃ顧客のことを考えているんですよ。それでも失敗したのはなぜかと考えていくと、伝えるときの「態度」や「見え方」に問題があったのではないかと。

 深堀りというと響きはいいんですが、結局、失敗分析ってずるいんです。結果が出た後は、いくらだって何だって言えますからね。だからせめてもの礼儀作法として、自分も同じ状況に置かれたらこれ以上のことはできなかっただろう、というところまで情報を探っていく。僕の場合は、自分も同じことをするだろうな、という地平に立ってはじめて、この本を書くことができました。

──製品やサービス自体は成功していたのに、社内事情によって打ち切りになるというケースもありました。マーケットや顧客といった「外」だけではなく、社内という「内」にも、攻略すべき相手、戦う相手が潜んでいるということですね。

荒木:ソニーのAIBOは画期的なロボットでしたが、世に言うソニーショックの余波で、生産中止の判断が下されました。この例からもわかるように、プロダクトのオーナーは顧客の目線と同時に、会社の経営状況や経営陣の価値判断をつねに意識しなければいけない。とくに新規事業は経営陣の一存で成否が決められがちな脆弱な存在ですから。

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