2014年の中国杯では、包帯姿で滑った羽生に有利な点数が与えられたと報じられたことも(写真/共同通信社)
このバンクーバー五輪では男子の採点に関しても論争が巻き起こった。4回転ジャンプを跳んだロシアのエフゲニー・プルシェンコ(39才)が敗れ、3回転以下のジャンプのみに抑え、確実な演技をしたアメリカのエヴァン・ライサチェク(36才)が金メダルを獲得したのだ。
「これは『4回転論争』と呼ばれました。五輪後は、ルールが大きく改正されるタイミングで、この年はこうした疑問を受けて、バンクーバー五輪後に大きな採点基準の改正が行われ、翌シーズンから4回転ジャンプやトリプルアクセルの基礎点が上がりました」(スケート連盟関係者)
このときは、4回転ジャンプに挑みやすいルール改正も行われた。それまでは「4分の1回転」以上回転が不足していると、1回転少ないジャンプの扱いになっていた。例えば4回転ジャンプの回転不足では、3回転ジャンプの基礎点しかもらえなかったが、改正後は「4分の1回転以上、2分の1回転未満」の回転不足の場合は、4回転ジャンプの基礎点のうちの7割を与えられるようになったのだ。
「これによって、各選手が4回転ジャンプやトリプルアクセルに挑戦しやすくなったといえます」(前出・フィギュアスケート関係者)
羽生が連覇を決めた2018年の平昌五輪後にも、大きな採点ルールの変更があった。技の「出来栄え点(GOE)」の幅が広がり、プラスマイナス3の7段階から、プラスマイナス5の11段階に拡大され、同じジャンプでも出来栄え点で大きな差がつくようになった。また、男子のフリーの演技時間が4分30秒から4分に短縮された。
「ただ回転するだけでなく、“美しいジャンプ”を跳ぶ羽生選手なら大きな加点がもらえる。フリーの競技時間の短縮もスタミナに課題のある羽生選手には有利に働くと思われました」(フィギュアスケートジャーナリスト)
だが、その後の羽生は、GOEをめぐって苦い思いを経験することになる。
「顕著だったのは、羽生選手がネイサン(・チェン)選手に敗れて3位に終わった2021年3月の世界選手権で、羽生選手のGOEが“低すぎる”と話題になりました。4月の国別対抗戦では“彼の点数の低さがより明らかだった”と主張する関係者も少なくありませんでした」(別のフィギュアスケート関係者)
例えば、羽生が国別対抗戦のフリーの最後に跳んだ3回転アクセルは、
「高さ、スピード、ジャンプの入り方など、どれを見ても完璧でした。しかし、GOEは3か4止まり。満点の5をつけたジャッジは1人もいませんでした。これにはさすがに驚きましたね」(前出・フィギュアスケート関係者)
スポーツジャーナリストの折山淑美さんが指摘する。
「ジャンプ前のつなぎ方によってもジャンプの難易度は変わります。GOEに関しては、直前まで演技をつないで跳ぶ羽生選手のようなジャンプと、構えて静止状態から跳ぶ選手では、もっと差があってもいいと思うことがありました」
ルール変更の協議は五輪後の2022年6月から行われる。まずは五輪だが、その後も羽生からは目が離せない状況は続きそうだ。
※女性セブン2022年1月1日号
かつては荒川静香や浅田真央を指導したタラソワ(写真/Getty Images)
深夜に家から練習へ向かう羽生結弦(2021年11月)
2018年8月、カナダ・トロントで母親と鍼灸クリニックに向かう羽生
2時まで練習をしていたという
場所はカナダ、練習を終えて出てきた羽生(2018年)
右足首の状態が懸念される
大きな荷物を引いていた