2019年06月12日、参議院本会議で改正動物愛護法が全会一致で可決、成立し、一礼する原田義昭環境相(時事通信フォト)
「私は知りません。あったとすればもっと後だと思います。儲かるからと暴走したのと、やはり追い詰められていたのだと思います」
ネットで悪質なブリーダーだと噂になっていたこと、まともな保護団体に知られてしまったことが重なり保健所、警察からは何度も警告を受けていたはずだという。まともな、とはどういうことか。
「以前から保護団体も入ってましたが、保護団体もいろいろです。寄付金目当てにいらなくなった繁殖犬を引き取ることが目的のところも入ってたんだと思います」
それ以上のことは知らないと黙られてしまった。もう二度とペット業界とは関わる気はないという。
犬はどこに消えた
先ほどまでの取材について「みな口が重い、松本市内から情報が出てこない」と尋ねると、「それはさっき言った通りのことです」と曖昧に繰り返す。
「田舎はそんなものです。ネットの力で変わるといいんですけど」
ネットの匿名は非難されることのほうが多いが、こうした地縁の濃い地域に起きた事件では時に有効な手段となる。狭い地元では表立って話せないしスラップ訴訟やいやがらせに遭うかもしれない。エビデンスは不足するにしても匿名だからこそ言えることはあるし、それが今回のきっかけにもなったと語る。
それにしても、不思議なのは約1000頭もの犬がどこに消えたか、ということだ。地元紙の報道では、とくに衰弱していた21頭は松本市保健所が保護、残る900頭あまりのうち大半は埼玉県の業者が引き取り、愛護団体などに移されたという。劣悪な環境から保護されてお終い、という単純な話ではなさそうだ。
「劣悪な環境の犬とはいえ高級な短頭種も多かったと聞きます。ペットバブルで犬不足ですから、処分するならどこも欲しいでしょうね」
あくまで一般論として獣医師が話してくれた。