国内

虐待が日常だったペット絶望工場 1000頭の犬はどこに消えたか

劣悪な環境で多数の犬が飼育されていたとされる施設。長野県松本市(時事通信フォト)

劣悪な環境で多数の犬が飼育されていたとされる施設。長野県松本市(時事通信フォト)

 2021年9月、新型コロナウイルス流行下で犬などのペット価格が高騰するなか盗難事件が急増したことを受けて、イングランドで「ペット誘拐」が新たな刑事犯罪として定められる方針となった。日本でもペット価格は高騰しており、それに伴い犬猫の大量生産と大量流通という歪みが露わになりつつある。そして2021年11月、フランスは犬や猫のペットショップにおける売買を2024年から禁止すると決めた。俳人で著作家の日野百草氏が、劣悪な環境で約1000頭の犬を飼育したとして逮捕されたペット事業者があった土地を訪ねた。

 * * *
「儲かっているとか聞いてないけど、人の出入りは多かったね」

 長野県松本市、牛伏川沿いを歩く男性に話しかけると戸惑いながらも答えてくれた。この周辺の住民はほとんどが知り合いだろう。同じ名字も多い。

「あまり知らないんだ、すいませんね」

 しつこく聞くことは自重した。ホテルのレンタルサイクルで借りた自転車で松本駅前から南へ数キロ下ると広大な畑が広がる。東には弘法山、小笠原氏を統一した信濃小笠原氏の拠点、林大城と林小城があり南に中山、その東に鉢伏山が続く。

「犬の話か、言えないな」

 三人の地元高齢者が牛伏川から西日を眺めていたので話かけたが断られてしまった。

「じゃあ犬のことは知ってるんですね」

 言葉をつなぐもすかさず手で払われた。この取材、いつになく難しい。松本市は決して小さな町ではないが、容疑者宅周辺は広大な畑を前に集落が小さくまとまっている。みな知り合いであり地元の仲間、よそ者に話さないのは当然だ。

 約1000頭の犬を劣悪な環境で恒常的に衰弱、死に至らしめたとして2021年9月に動物愛護法違反の疑いで家宅捜索を受けたペット業者「アニマル桃太郎」はこの地にあった。「あった」というのは元社長と従業員が11月に二度にわたり逮捕され、すでに廃業しているからである。元社長は保健所に登録した数の倍近くも上回る犬を繁殖し、ペットショップに卸していた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン