弟子の中でも共演が多かった
「こいつはいい、こいつはダメ」と言う時に、やたら私の名前ばかりを出す。バランスを考えれば他の弟子の名前を出せばいいのに、そうはしない。そこは小さん師匠を反面教師としていたんだと思います。談志は小さん師匠について、「俺だけ可愛がっておけばよかったんだ」と言っていました。小さん師匠は、弟子は平等に可愛がり、極めて日本人的な教育をしました。それに反発した談志は、弟子に対して露骨に依怙贔屓をした。
もちろん、他の弟子からは嫉妬、やっかみがありましたし、いじめも受けました。先輩たちより早く二つ目になろうとした時に、兄弟子たちはみんな「ふざけんな」と怒りましたが、談志は「あいつはクリアしたからいいんだ」と突っぱねた。結局、(立川)談春兄さんと遊んでいて油断したところで、後片づけを忘れて帰ってしまって師匠をしくじってしまい、「お前はまだ二つ目には早い」となっちゃいましたが。
落語の難しいところは、面白いやつはだいたい最初から面白いんですよ。談春兄さんは10代の頃からこんな上手い人はいないと思ったし、春風亭昇太さんも柳家喬太郎も、最初に会った時から面白かった。売れるっていうのは、才能のあるやつが稽古して蓄積してきたものが、いつか分からないけど爆発するということで、稀に年を取ってから花が開く場合もあるけど、ほんの一握り。だから談志は依怙贔屓をしたし、そこは弟子を育てるうえで、私自身も考えるところですね。
(第3回につづく)
【プロフィール】
立川志らく(たてかわ・しらく)/1963年、東京生まれ。1985年に立川談志に入門。1995年、真打昇進。『全身落語家読本』『雨ン中の、らくだ』など著書多数。『ひるおび!』ほかテレビ出演多数。12月25日に、高田文夫氏が企画する「第四回オール日芸寄席~おっと天下の日大事~」(有楽町・よみうりホール・前売6000円=全席指定・主催ワタナベエンターテインメント https://www.watanabepro.co.jp/liveinfo/12591) に出演予定。
※週刊ポスト2022年1月1・7日号