ライフ

角野栄子、唯川恵、桜木紫乃、綿矢りさ、原田ひ香が選ぶ「2021年の3冊」

 ステイホームの時間が長かった2021年、読書に時間を費やした人も多いことでしょう。しかし、面白い本に出会うのはなかなか難しいものです。文章を書くことを生業とするかたがたは、どんな本をおすすめするのでしょうか。5人のかたに、2021年の「私が選ぶ3冊」を聞きました。

『人間の絆』

角野栄子さんが選んだ『人間の絆』

●角野栄子さん(作家)/角野栄子児童文学館が2023年、江戸川区に開館予定

『人間の絆』(上・下巻)/サマセット・モーム/訳・金原瑞人/新潮文庫
 モームの人物造形のすごさにはいつも圧倒される。人を見つめる目の底の底にどうしようもない冷たさを感じる。それ故に物語に起伏が生まれて、読む者の心に強く迫ってくる。読後の感動は深い。新訳はリズムある言葉で、物語の面白さを一層くっきりとさせている。

『海のアトリエ』/堀川理万子/偕成社
『わたしは夢を見つづける』/ジャクリーン・ウッドソン 訳・さくまゆみこ/小学館

『哄う北斎』

唯川恵さんが選んだ『哄う北斎』

●唯川恵さん(小説家)/出身地・金沢を舞台にした芸妓たちの物語を連載中

『哄う北斎』/望月諒子/光文社
 タイトルの印象とは違う現代絵画ミステリー。画商にキュレーター、美術愛好家、美術評論家、投資目的の金満家、そこに美術品泥棒が加わるコンゲーム。なかなかにハードルは高いが、深い造詣をお持ちの方ならたっぷり堪能できる作品である。

『匣の人』/松嶋智左/光文社
『翼の翼』/朝比奈あすか/光文社

『限界風俗嬢』

桜木紫乃さんが選んだ『限界風俗嬢』

●桜木紫乃さん(小説家)/11月に2冊目の絵本『サチコさんのドレス』を上梓

『限界風俗嬢』/小野一光/集英社
 心と体の「限界」とはどこか。体を売りながら、その行為の意味と理由を極限まで語り尽くす女たちが、現代社会をあぶり出す。買う人間がいるから売るのか、それとも逆か。理解無用のつよさが見える。読む側の立ち位置が透けるような一冊。

『月夜の森の梟』/小池真理子/朝日新聞出版
『江口寿史の正直日記』/江口寿史/河出文庫

『私に似ていない彼女』

綿矢りささんが選んだ『私に似ていない彼女』

●綿矢りささん(小説家)/2021年にデビュー20周年の渾身作『オーラの発表会』を発表

『私に似ていない彼女』/加藤千恵/ポプラ社
 真にサイコパスな人って多分少ない。本書に出てくる、優しい性格ではあるけれど、綺麗事だけではどうしようもなくなり日常から逃亡する人たちの方がリアル。たとえ底までは分かり合えなくても、どこか心が共鳴し合う女性同士の関係を描いた短編集。

『1964年の東京オリンピック 「世紀の祭典」はいかに書かれ、語られたか』/石井正己・編/河出書房新社
『鮨』(短編集『老妓抄』より)/岡本かの子/新潮文庫

『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』

原田ひ香さんが選んだ『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』

●原田ひ香さん(小説家)/『三千円の使いかた』がベストセラーに

『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』/井上はじめ/新潮社
 投資の本で1億という数字を出してるものは数あれど、ここまで地道で再現性のある投資本はなかなかありません。投資信託だけでなく、不動産投資に触れているのも画期的。お金について勉強したい方、この本から始めることをお勧めします。

『ガラスの海を渡る舟』/寺地はるな/PHP研究所
『北北西に曇と往け』/入江亜季/ハルタコミックス

※女性セブン2022年1月6・13日号

関連記事

トピックス

本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン