芸能

『カムカム』深津絵里が演じる18歳の「るい」、一言でいえば見事だった

番組公式HPより

番組公式HPより

 朝ドラの評判がすこぶるいい。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 NHK朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて3世代の女性が主人公となり物語をつむいでいく、という構成で注目を集めています。物語は11月1日から始まり約2ヶ月を経た12月下旬の今。上白石萌音さん演じる1代目ヒロインの安子から、その娘で2代目ヒロイン・るい(深津絵里)の物語へと移り始めました。

 安子を演じた23才の上白石さん。振り返ればたった2ヶ月とはとても思えない圧倒的な存在感でした。稔との出会いと結婚、夫の戦死、空襲で実家と両親や祖母も失い、娘のるいを育てながら家業の和菓子屋の復活を目指す……。実に濃密な時間でした。

 ただし、12月上旬から進駐軍のロバート(村雨辰剛)が登場し、やたら出番が多くなったのは気になるところ。亡き夫の家に暮らし肩身の狭い安子のはずなのに、アメリカの軍人と町でたびたび会う。約束をしているわけでなくても何度も何度も。そして「偶然」にも、ロバートと安子が二人でいるところを稔の弟・勇が見てしまう。さらに「偶然」にも、ロバートに介抱されている母の姿を娘・るいが見てしまう。「ロバートさんが出てきて物語が展開する」というパターンが、くどいくらい。とにかく安子をアメリカへと旅立たせるために、脚本も演出もやや無理をしたきらいがあります。

 ロバート役の村雨さんも大変だったことでしょう。大量の日本語セリフをほぼ演技の素人が語らねばならなかった。見ていて負担が大きく可哀想なほど。視聴者もちょっと消化不良になりそうです。なぜなら、稔との記憶が薄らいでいないうちに、あっという間に安子は「敵国」アメリカ人とカップルになり、しかも娘を日本に残して渡米してしまったのですから。

 安子の決断は非常に重たかったはず。だからるいを手放さざるをえない理由についてもう少し、心のうちの変化を丁寧に細かく描いてみせてほしかった。ロバートにどこまで惹かれていたのか、それはなぜなのか。娘を日本へ置いていく判断はもっともっと複雑だったはず。

 展開の拙速さについては、おそらく制作サイドもわかっているのでしょう。あるいは伏線として後に回収しようと意図して消化不良にしたのか。勇に「よほどのことがあったはずじゃ」という意味深なセリフを敢えて語らせていましたから。

 制作側は年末年始のタイミングを意識し、どうしても年内にるい役・深津絵里さんを登場させておきたかったのでしょう。でも、これまでの2か月間の濃密な世界があるからこそ、ヒロイン安子のフィニッシュはもう少し丁寧に描いて欲しかった。

 とにもかくにも、娘・るいを演じる深津さんが今週いよいよ登場となりました。新たな主人公として、48才の深津さんがうら若き18歳の女性となり、いかに物語を引き継ぎ見ている人を納得させドラマ世界へと引き込むのか。このバトンタッチの瞬間こそ、最大の関心事の一つでした。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン