深津絵里との共演は?(時事通信フォト)

役柄に応じてさまざま表情を見せる(時事通信フォト)

 さて、その転換は……一言でいえば見事。ちょっと違和感を抱きそうなところをぐいぐいと演出で引っ張り、フラッシュモブ風のミュージカル演出も大胆に活用して、岡山の田舎からたちまち大阪の繁華街へと舞台を移してしまった。その力技、アッパレです。

 深津さんも役者として凄い。おかっぱ風の前髪でやや臆病なうら若き女性の透明な雰囲気を、ぴたりと出しています。しかも、前髪に隠された傷=安子の記憶、という演出も効いている。

 植木等のスーダラ節が響き、空気はたちまち1960年代の日本へ。そして大阪の庶民ならこの人。セリフを語ればたちまち道頓堀の空気が出来上がる濱田マリさんを、クリーニング屋のおかみ役に投入し、るいの物語はたしかに回り始めました。

 さて、今後るいはどんな女性に成長していくのか。母を憎み「I hate you(大嫌い)」と語ったるいが、これからどのように関係を拓きあるいは乗り越えていくのか。まんまとバトンタッチ戦略に乗せられて、視聴者は心地よく「るいの物語」に巻き込まれ始めました。その意味でこのバントタッチは成功でしょう。

 思い切って主人公を母から娘、そして孫へとチェンジしていく斬新な手法。半年間という長丁場の朝ドラに、予想外のリフレッシュ感をもたらす奇手かもしれません。

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