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『カムカム』深津絵里が演じる18歳の「るい」、一言でいえば見事だった

番組公式HPより

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 朝ドラの評判がすこぶるいい。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

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 NHK朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて3世代の女性が主人公となり物語をつむいでいく、という構成で注目を集めています。物語は11月1日から始まり約2ヶ月を経た12月下旬の今。上白石萌音さん演じる1代目ヒロインの安子から、その娘で2代目ヒロイン・るい(深津絵里)の物語へと移り始めました。

 安子を演じた23才の上白石さん。振り返ればたった2ヶ月とはとても思えない圧倒的な存在感でした。稔との出会いと結婚、夫の戦死、空襲で実家と両親や祖母も失い、娘のるいを育てながら家業の和菓子屋の復活を目指す……。実に濃密な時間でした。

 ただし、12月上旬から進駐軍のロバート(村雨辰剛)が登場し、やたら出番が多くなったのは気になるところ。亡き夫の家に暮らし肩身の狭い安子のはずなのに、アメリカの軍人と町でたびたび会う。約束をしているわけでなくても何度も何度も。そして「偶然」にも、ロバートと安子が二人でいるところを稔の弟・勇が見てしまう。さらに「偶然」にも、ロバートに介抱されている母の姿を娘・るいが見てしまう。「ロバートさんが出てきて物語が展開する」というパターンが、くどいくらい。とにかく安子をアメリカへと旅立たせるために、脚本も演出もやや無理をしたきらいがあります。

 ロバート役の村雨さんも大変だったことでしょう。大量の日本語セリフをほぼ演技の素人が語らねばならなかった。見ていて負担が大きく可哀想なほど。視聴者もちょっと消化不良になりそうです。なぜなら、稔との記憶が薄らいでいないうちに、あっという間に安子は「敵国」アメリカ人とカップルになり、しかも娘を日本に残して渡米してしまったのですから。

 安子の決断は非常に重たかったはず。だからるいを手放さざるをえない理由についてもう少し、心のうちの変化を丁寧に細かく描いてみせてほしかった。ロバートにどこまで惹かれていたのか、それはなぜなのか。娘を日本へ置いていく判断はもっともっと複雑だったはず。

 展開の拙速さについては、おそらく制作サイドもわかっているのでしょう。あるいは伏線として後に回収しようと意図して消化不良にしたのか。勇に「よほどのことがあったはずじゃ」という意味深なセリフを敢えて語らせていましたから。

 制作側は年末年始のタイミングを意識し、どうしても年内にるい役・深津絵里さんを登場させておきたかったのでしょう。でも、これまでの2か月間の濃密な世界があるからこそ、ヒロイン安子のフィニッシュはもう少し丁寧に描いて欲しかった。

 とにもかくにも、娘・るいを演じる深津さんが今週いよいよ登場となりました。新たな主人公として、48才の深津さんがうら若き18歳の女性となり、いかに物語を引き継ぎ見ている人を納得させドラマ世界へと引き込むのか。このバトンタッチの瞬間こそ、最大の関心事の一つでした。

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