ライフ

歴史作家が厳選 2021歴史の新発見・人類史編「謎の人類の化石」

2021年5月、イタリアの洞窟で発見されたネアンデルタール人の化石=イタリア文化財・文化活動・観光省提供(AFP=時事)

2021年5月、イタリアの洞窟で発見されたネアンデルタール人の化石=イタリア文化財・文化活動・観光省提供(AFP=時事)

 変異を繰り返す新型コロナウイルスとの戦いに終わりが見えないまま、2021年が終わろうとしている。歴史作家の島崎晋氏が、今年判明した人類学上の新発見から、特に目を引く「謎の人類」に関するニュースをまとめて解説する。

 * * *
 世界中が新型コロナへの対応に追われた2021年でも、調査研究の世界に休業はなく、人類学の成果も熱かった。なかでも目立ったのが、「未知の人類の可能性がある化石の発見」と「ネアンデルタール人に関する新説の数々」だった。

イスラエルで「未知の人類」化石発見

 2021年6月、「未知の人類」の骨がイスラエルで見つかったとのニュースが『ナショナルジオグラフィック日本版』などで配信された。元ネタは学術誌『サイエンス』に発表された論文で、執筆したのはイスラエルの研究チーム。彼らの調査対象であるテルアビブ郊外のラムラ付近で人骨化石と石器が発見された。この化石は発見場所にちなんで、「ネシェール・ラムラ・ホモ」と命名された。

 注目された理由は2つある。1つは、形態的な特徴が古代型ヒト属ともネアンデルタール人とも共通しながら、ホモ・サピエンスが主役のはずの12万~14万年前のものであったこと。もう1つは、同じ場所で発見された石器が、ホモ・サピエンス(現生人類)でなければ作りえない高度な作りであったことである。

 論文の筆頭著者であるテルアビブ大学の人類学者イスラエル・ハーシュコビッツ氏は、「2つのヒト属集団がレバント地方(地中海東部沿岸地方)で約10万年にわたって共存し、知識と遺伝子を交換していた」ことをもって「驚くべき発見です」と語っている。

 今回の研究には参加していないが、独マックス・プランク人類史科学研究所の古人類学者マイケル・ペトラグリア氏も、今回の発見が「人類の進化を1本の線として単純に描くことはもはやできず、多くの拡大、縮小、絶滅があった」という新しい見方を裏付けていることに同意している。まだ仮説の域を出ないが、少なくとも人類の進化の道筋が単純なものでなかったことは間違いない。

 

関連キーワード

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
松田烈被告
「テレビ通話をつなげて…」性的暴行を“実行役”に指示した松田烈被告(27)、元交際相手への卑劣すぎる一連の犯行内容「下水の点検を装って侵入」【初公判】
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
会談に臨む自民党の高市早苗総裁(時事通信フォト)
《高市早苗総裁と参政党の接近》自民党が重視すべきは本当に「岩盤保守層」か? 亡くなった“神奈川のドン”の憂い
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン