激変に向かう角界勢力図
出羽海一門の理事長候補
もちろん、大所帯の二所ノ関一門には、他にも現在副理事の高田川親方(元関脇・安芸乃島、54)をはじめ将来の理事候補が複数いる。
「それでも、若手だけでなく古参の二所ノ関一門の親方衆からも稀勢の里を推す人が増えていくのは確実だ。稀勢の里の師匠だった鳴戸親方(元横綱・隆の里)は、本来なら二所ノ関一門から理事になれたタイミングで“貴の乱”が起きて機を逸し、翌年に急死。その無念を知る親方たちは、“弟子の稀勢の里を早く理事にしてやりたい”という思いがある」(二所ノ関一門関係者)
対抗馬の位置づけとなる高田川親方は、もともと“反・貴乃花”の急先鋒として執行部の評価が高かったが、貴乃花はすでに退職したうえに、いまの二所ノ関一門には旧貴乃花一門の親方衆も多く、「簡単に支持は集まらないだろう。今回の改選では副理事からも外れる」(同前)というのだ。
「2年後に稀勢の里が理事になるとして37歳ですが、若すぎるという話にはならない。貴乃花が理事になったのは37歳だし、北の湖親方は34歳で監事(現在の副理事)、42歳で理事、そして48歳で理事長です。元・佐田の山の出羽海親方が理事になったのも35歳。協会の将来を担う親方であれば30代の理事就任、そしてその先の早い時期の理事長昇格にも現実味はある」(同前)
カギを握るのは、二所ノ関一門と双璧をなす一大グループである出羽海一門の動向だ。「二所ノ関一門と出羽海一門は理事を3人ずつ輩出できる“数の力”がある。この2つの一門が手を組めば、10人の理事の過半数を占め、理事長の人選はそれで決められる」(協会関係者)というのだ。
その出羽海一門は、初場所3日目(1月12日)に国技館で一門会を開き、今回の理事候補には現職の出羽海親方(元前頭・小城ノ花、54)、春日野親方(元関脇・栃乃和歌、59)、境川親方(元小結・両国、59)を擁立し、副理事にも現職の藤島親方(元大関・武双山、49)を担ぐことになった。出羽海一門関係者が言う。
「現職の理事は八角理事長と同世代なので、出羽海一門としては“世代交代”の後に藤島親方を理事長候補とするのが既定路線。60歳手前の八角理事長があと何年かで退き、出羽海一門のトップとなった藤島親方につなぎ、その後に稀勢の里が二所ノ関一門の統帥として40代で理事長になる流れが年代的にちょうどいい。2つの一門が組めばスムーズに進められる」
※週刊ポスト2022年2月4日号